2015年4月21日火曜日

「お疲れ様」、「お世話になっています」、「させていただきます」の乱用に違和感を覚える

いつ頃からか、ずっと若い人から「お疲れ様」と言われて違和感を覚えたが、学生でも教授に対して使うらしい。聞くところによると、とても丁寧な挨拶として、いまでは頻繁に使われるようだ。というより、そう教えられているようだ。メールの文頭に「お疲れ様です」と書かれてあって驚いたことがある。「お疲れ様」は何かが済んだときとか、別れ際に言う挨拶語ではないかと思うからだ。

誰に教わったのかは知らないが、昔は、というと年寄りの繰り言と言われそうだが、年長者に対して、「お疲れ様」や「お疲れ様でした」なんて言うことはなかった(と思う)。「御疲れ様」は、労(ろう)を労(ねぎら)う挨拶語として『広辞苑』にも出ているが、私の理解では、年長者が年少者や同輩に、よくやった、よく頑張った、ありがとう、という気持ちを込めて使う言葉ではないかと思う。

例えば、仕事を頑張ってこなして、上司に「もう、帰っていいよ」と言われた(り、言われなかったりした)ときに、「では、お先に失礼します」と言った返事に、上司が「あー、お疲れさん」とか「お疲れ様」と言うのであれば違和感はない。

仕事も大してできない若造にニコニコ顔で「お疲れ様」と言われれば、私なら、「ああ、お前のせいで、すっかり疲れてしまったわいな。お前が疲れるくらい仕事をしろよ」と言いたくなってしまう。部下や年少者から「お疲れ様」と言われて喜んでいる者や、そう挨拶されることを期待している者、そう挨拶しろと教えている者の気が知れない、と思うのは私だけだろうか。

では、挨拶の際に何と言えばいいのかと聞かれれば、別れ際には、「失礼します」とか「お先に失礼します」と言えばいいし、何かの仕事が一段落して上司や年長者に労いの言葉をかけるとしたら、「お疲れになったことでしょう」(と言って,その後に、「十分できなくてすみませんでした」と言えればもっといい)と言えばいい。感謝の気持ちがあるのなら、素直に「ありがとうございました」と言えばいい。飲み会の後で、青春真っ盛りのような若者に「お疲れ様でした」と言われたときには、すっかり酔いが覚めてしまったことがある。

ちなみに、「お疲れ様」を英語で言おうとすると難しい。インターネット上のWeblio翻訳でいろいろと試したところ、機械翻訳では、まっこと面白いことに、Dear Ms. fatigue. となった。たしかに、これは、名前が「お疲れ」の女性に向けた挨拶語になっている。このほかに、英語表現辞典では、Have a nice evening やHave a good evening、See you tomorrow というのもあった。「疲れる」に相当する英語が一字も入っていない。

「お疲れ様」の「様」をひらがなで「さま」として「お疲れさま」で翻訳させると、単に Thank you となった。うーん、そういうものか。「お疲れさまでした」とやると、なんと、この言葉の使い方についての次のような注釈付きの翻訳が出てきた。

•お疲れさまでした(上司が部下に対して「よい仕事をした」と褒める場合【ややカジュアルな表現】) Good job.
•お疲れさまでした(上司が部下に対して「よく働いてくれてありがとう」と伝える場合【やや丁寧な表現】) Thanks for your hard work.

年少者が年長者などに対して「お疲れ様」と言うことに違和感を覚えるのも、この注釈で合点がいくのではないだろうか。

「お世話になっています」も挨拶語として頻繁に使われるが、これも、使う場面によっては違和感を覚える。本当にお世話になっているのならともかく、そんなお世話をしたつもりもないのに、ましてや、初めての人にのっけから、「お世話になっています」と言われると、空々しくて嫌になる。個人的にではなく商売上であれば、企業どうしの関係として通常の挨拶語だろうが、同じ組織の中での連絡のやりとりの際にも、決まり文句のように「お世話になっています」とやられると、「えっ、お世話したっけ。あんた誰だっけ」と言いたくなる。

「何々させていただきます」とか「何々させていただきました」という言い方も乱用されていて違和感を覚える。「何々いたします」とか「何々します」、「何々することにいたしました」とか「何々しました」と言えばすむ場合でも(その方が自然なところを)、わざわざ「させていただきます」と言う。謙(へりくだ)って、とっても丁寧に言っているつもりなのかもしれないが、ちっとも、そんな感じがしない。かえって、慇懃無礼というか、ぎこちなさというか、軽いというか、私にはよい印象がない。

というわけで、「以上、一言申し述べさせていただきました」。

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