2016年11月5日土曜日

大学入試に導入される新テストをめぐる疑問

文科省は、2020年度の大学入試からセンター試験に替わる新テストを導入するという。

毎日新聞によると、「新テストは思考力や表現力を測るため、国語と数学で新たに記述式問題が出題される」という。そして、「国語は、比較的解答字数が多く難易度が高い問題と、おおよそ80字以下の短文記述式で比較的難易度が低い問題の2種類」が出題されるそうだ。大学からは、「記述式問題を使いたいが、採点業務が大きな負担になる」という意見が出ているという。また、「難易度が高い問題は受験生が出願する大学側が採点し、低い問題は入試センターがA、B、Cなどと段階評価して結果を大学に提供し、大学が評価に活用する」そうだ。そして、「入試センターが担う段階評価の業務は民間の教育業者に委託する方針」とのことである。

定員があって定員以上の応募者があるの基本的な選抜方法には2種類ある。抽選か順位付けである。入試の場合は、応募者の学力が似たり寄ったりであれば抽選でもかまわないだろうが、一般的には順位付けで行われる。

順位付けする方法にも、いろいろある。推薦であっても、応募者多数の場合には順位付けが行われるが、これも一般的には学力を測るためのテストの結果による。そのときに最も重要なことは、その順位付けを受験者をはじめ誰もが納得するものでなければならないということだ。

誰でもが納得するというのは、客観的な採点ができるテストで順位付けがされるということだ。思考力や表現力を測るためだからといって、それが記述式でなければならないというのは、まさに思考力や表現力が乏しい発想ではないだろうか。〇×式であろうと多肢選択式であろうと、思考力や表現力を測ることにはかわりがない。思考力や表現力をできる限り客観的に測定できるものとして〇×式や多肢選択式が“発明”されたとも言える。

〇×式や選択式では、まぐれ当たりが生じる、という意見もあろうが、そうしたリスクがあったとしても、採点者の力量や好みなどに左右されずに、しかも時間やエネルギーを軽減して学力を客観的に測ることができる利点の方が大きいのではないだろうか。

記述式の採点で生じるリスクは、投じる時間やエネルギーのことも考え合わせると、〇×式や選択式よりも遙かに大きい。ましてや、50万人という膨大な数の受験者が同時に受験するとなれば、採点者の数も膨大になる。採点者による違いが微妙であったとしても、順位には大きな差が出るだろう。順位付けは、1点差だろうと10点差だろうと、点数に関わりなく順位で判定されるから、採点者による1点、2点の差が順位に大きく影響する。

段階評価は民間業者に丸投げするというのだから、毎年実施している無駄な全国学力テストで大もうけしている業者にまたぞろ莫大な金額が流れていくことになるのだろう。業者はアルバイトを雇って、適当にA、B、Cのランクを付ければいいのだから、こんなうまい話はないとほくそ笑んでいることだろう。評価された結果は誰が点検するというのだろうか。

採点業務で負担が大きいから反対だという大学側も、その理由はよくわかるが、そんな物理的な理由からではなく、新入生選抜の方法について、大学ではどういう学生をどういうふうにして教育するのか、そのための適切な選抜方法はどういうものかをしっかりと打ち出さなくてはならないだろう。それこそ、大学の思考力と表現力が問われているのである。

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