2014年11月25日火曜日

アベノミクス解散とやらに老人はどう対応しようか

内閣が解散して衆院選挙が行われる。安倍首相は、「アベノミクス解散」だと見得を切ったが、聞いた方は、「アベノミクス」は解散=おしまい、ということかと思った。

アベノミクスは、「安倍 のみ クスクス 笑う」とか「安倍 のみ くすねる」、はたまた「あべのハルカス」をもじったものかと思っていたので、もう、そうした冗談をおしまいにして、真面目に政治に取り組むことを宣言したのかと思った。

まあ、これは出来の悪い駄洒落だが、アベノミクスというのは、かつてアメリカ大統領レーガンが進めた経済政策に対して名付けられた造語であるレーガノミクスを真似たものだ。

レーガノミクス - レーガン(Reagan)と経済(economics)をくっつけてレーガノミクス(Reaganomics) - は、アメリカの三大放送ネットワークの一つであるABC(American Broadcasting Companies Inc.:アメリカ放送会社)の当時のラジオ・キャスターであったポール・ハーベイ(Paul Harvey)が作った言葉とされている。レーガンの経済政策ということだから、アベノミクスは、安部の経済政策ということになる。

それが、どんな政策かは内閣府が詳しく説明している。三本の矢だの日本再興戦略だの財政健全化だ何だのと言っているが、おそらく、財政を更に悪化させて国民の生活を混乱させ、将来に大きな付けを残すことになるだろう政策ばかりだ。

アベノミクスという言葉を誰が最初に使ったかということについては、それが下手な捩(もじ)り、パロディにしか感じないので関心もないが、首相自らがアベノミクス解散と言うのだから、本人はアベノミクスという言葉をえらく気に入っているのだろう。

レーガノミクスReaganomicsは、レーガンという苗字とエコノミクスという言葉が素直につながるが、アベノミクス(Abenomics)は安倍(Abe)という苗字とエコノミクス(economics)の間に「の」を挟んで無理矢理つなげたものだ。だから、「アベのミクス」と書くのが正しい(こんなことに正しいとか正しくないというのもおかしいが)。

安倍とエコノミクスを素直につなげれば、「アベコノミクス」(Abeconomics)となるはずだ(どうでもいいことだが)。実際、外国では、Abeconomics(アベコノミクス)も使われている。でも、これだと、「安倍好み薬(くす)」や「安倍好み屈(く)す」、「安倍子のミックス」とも読めるから、使いたくないのかもしれない(穿ち過ぎか)。ちょっと訛(なま)れば、「安倍好み屑」(アベコノミクズ)や「安倍好み愚図」(アベコノミグズ)にもなる。何か現在の経済状況というか内閣の陣容を象徴しているようで寒気がしてきた。   

ともあれ、内閣解散ということになれば選挙だ。12月2日公示-14日投票と決まった。国会議員はこれから大忙しだろう。選挙費用もかかるだろう。かつて「勝手連」なんて銘打って候補者に依頼されたわけでもないのに選挙応援をしたグループもあったように、手弁当で応援する有権者などもいるのかもしれない。

総務省が発表している行政事業レビューシートによれば、平成21年8月30日に実施した第45回衆議院議員総選挙に国が支出した費用は598億8,440万円だ。金の流れは以下の図のようになっている。

総選挙を一回やるのに600億円はかかるということだ。今回の選挙では、どれくらいの予算を計上しているのだろう。東京新聞には、「総選挙事務700億円 貴重な一票忘れずに」という見出しの記事が掲載されていて、「この三年間で千九百億円程度の税金が選挙事務に費やされることになる」と書かれている。棄権することは、その費用を無駄にするということだが、投票率の上下で費用が変わるのだろうか。

ためしに身近な何人かに、「今度の衆院選にどれくらい経費がかかると思う」と聞いてみたところ、「そりゃ、何千万もかかるだろう」とか「そんなもんじゃ済まないだろう。5億はいくだろう」、「いやー、10億くらいじゃないのか。選挙には金がかかるんだよ」という返事が返ってきたが、600億円とか700億円とか聞いてビックリしていた。

「うそだろう。そんな大金を選挙に使えるんなら、震災復興でも何でもすぐにでもできるだろう」と侃々諤々の議論が始まった。いまは、選挙に大金を使う時期ではない、という議論が国会でされたかどうか記憶にないが、「アベノミクス解散には随分と金がかかることよ」ということで、「言っていることとやっていることとが全く合ってねーだろう」とか「これでデフレを促進かよ」と文句たらたらの時間が過ぎた。

選挙のたびに投票率が発表されて、前回より上回ったとか下回ったとか議論されるが、老人は、どの選挙でも投票によく足を運んでいる。下の図は、明るい選挙推進協会が発表している衆議院議員総選挙投票率の推移(中選挙区・小選挙区)で、その次の図は年齢別の投票率を示したものだ。

 
平成24年12月16日に行われた衆院選での平均投票率は59.32%だったが、60代は74.93%、50代は68.02%と平均を大きく、といってよいほどに上回っている。70歳以上になると病弱などの理由から選挙ことに行けない有権者が増えるためか50~60代よりも投票率が下がる。それでも63.30%と20~40代の投票率を上回っている。平均投票率を押し下げているのは20~30代ということになる。
 
下の図は、2013年7月21日に行われた第23回参議院選挙の年齢別投票率である。年齢が上がるほど投票率が高くなっていることが一目瞭然である。70代でも投票率は高く、80代になると急激に低下するが、それでも20代の投票率よりも高い。
 
 
上の図と一緒に掲載されている年齢階層別有権者数・投票者数・投票率の表を使って、年齢層ごとに有権者に占める割合(有権者比率)と投票率を掛けて各年齢層が選挙に与える影響力みたいなものを作成してみた(下の表)。
 
 
20代の影響力は60代の3分の1でしかない。80歳以上と同程度である。30代でも60代の半分である。こと選挙に関しては、高齢層が圧倒的に優勢である。そして、選挙への影響力が拮抗する年齢階層として、20~50代と60代以上とに二分することができそうである。大雑把に言って、働く世代(現役世代)と退職世代(年金世代)とが選挙への影響力という点で拮抗しているということである。しかし、こうした図式も近い将来には崩れることになるだろう。
 
最新の人口推計(2014年11月1日現在)では、日本の総人口は1億2,708万人(概算値)で、そのうち有権者(20歳以上)は1億485万人である。総人口の82%が有権者ということになるが、有権者総数に占める年齢階層別割合は、20代が12.3%、20~30代が27.6%、20~40代が45.2%、50代が14.7%、60歳以上が40.1%、65歳以上が31.6%である。少子・高齢化が進んでいるので、今後は、有権者の高齢化がもっともっと進み、そんな遠くない時期に、有権者の半分は高齢層で占められることになる。有権者を18歳以上にしても、少子化が進んでいるので、高齢層が占める割合にはほとんど変化はないだろう。
 
有権者比率が低い上に投票率が低いのでは、若年層は今後ますます選挙を通しての政治参加から置いてけぼりをくうことになる。選挙は、有権者比率が大きく、投票率も高い高齢層を中心に回っていくことになる。
 
高齢層中心の選挙になってしまうとはいうものの、現在の高齢層も若いときには投票率が低かったのかもしれないから、若者の投票率が低いからといって非難することも問題にすることもできないかもしれない。これまでの選挙が示している年齢別投票率の結果は、年をとるにつれて多くの人が投票にいくようになることを教えているのかもしれない。選挙って、そんなものかもしれない。だからといって、それでかまわないとか、仕方がないというわけではない。
 
そこで、老人の登場、と言いたいのである。選挙が高齢層中心になってしまうのは、少子・高齢化が進む社会では避けることができない現象である。だから、老人は、選挙では若者の分までしっかりと考えて投票しなければならないということなのである。老人の一票は、かつてとは比べものにならないほど重くなったことを老人は自覚しなければならないのである。
 
老人だからといって、老人に利益になることばかりを考えて政策や候補者を選んではいけないということである。もちろん、年金や医療、介護など老人の生活に直結する政策の充実は重要であるが、現在の若者もいずれ年をとるのだから、将来を見据えた社会保障政策が進められているのかどうかを見極めなければならない。
 
現在の高齢世代のためだからといって、現在の若年世代に負担を負わせたり、将来の高齢世代のためだからといって現在の高齢世代に我慢を強いるような政策は子どもでも考えつく稚拙な策であり、政治の舞台で活躍しようと立候補し、選挙で選ばれようとする人間のすることではない。
 
真に選良(せんりょう:すぐれた人を選び出すこと。また、その選ばれた人。特に、代議士をいう-広辞苑)たらんとするならば、凡人が為し得ないことを為そうとしなければならない。老人には、そのことを見極める眼力が求められているのである。そして、そうした眼力を発揮すれば、選挙結果をいくらでも左右できるだけの勢力に老人はなっているのである。
 
60歳以上人口3,310万人の投票率が70%だとすると、2,317万人が投票所に足を運ぶことになる。すごい数である。仮に、その人たちが一人毎年1,000円を寄付すれば、総額は年に230億円になる。政治活動費として一人1年1億円としても、230人を国会に送り込むことができる。せいぜい頑張ってもらうために活動費を年に2億にしても115人の国会議員を抱えることができる。優れた政治家を育てることも老人は考えなくてはいけないだろう。
 
わけのわからない解散のために選挙費用600億円が使われる。有権者一人あたり572円になる。700億円かかるとすると有権者一人あたり667円になる。選挙のたびに小金ををむしり取られているようなものだ。そのことを考えれば、優れた政治家を支えるために、年に1,000円を出し合って新たな政党を作った方が、ずっとましな気がする。
 
投票率が前回同様の59.32%だとすると、投票に行く人は6,219万7,020人で、投票に行かない/行けない人は4,265万2,980人ということになる。投票に行かない/行けないからといって政治に関心がないとは言えないかもしれないが、投票に行く人は、投票に行かない/行けない人の分まで考えて投票するしかない。そうすることが、知性も工夫も優しさも何もないような政策を得意顔で進めている政治家と官僚に、そして、おちゃらけ気分でワイドショーに出演して、鵜飼いの鵜が一度口にした鮎を飲み込むこともなく、すぐ吐き出すように、仕入れたばかりの知識を消化することもなく吐き出しては経済と政治について知ったかぶりで話しては高額の出演料をせしめている連中に鉄槌を下すことにつながるのではないだろうか。
 
老人よ、団結して立ち上がれ!なんて言っても無理かな~。かえって石がとんでくるかな・・・。
 
<追記>
下記の川柳を某新聞社に投稿したが、没にされたので、ここに記しておく。自分ではとても気に入っているのだが・・・
 
効くのかい 誰が薦めた 安倍飲み薬きくのかい だれが すすめた アベノミクス) 「薬」(くすり)は、「くす」とも読む。

3 件のコメント:

  1. 一回の選挙で700億円もの税金が使用されるとは・・・。

    今回の選挙はただただ安部政権の延命ですよね。
    特に意味もないことに、こんなに血税が使用されていることに悲しく思いますね。

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    1. コメントありがとうございます。何のための解散かわからないことに多額の血税を平気で浪費する無神経さ。本当に国民を、将来の日本を考えているとは思えません。お仕置きをしなければ日本はいよいよダメになってしまうという危機感を老人は強く感じます。

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    2. シッカリとお仕置きできない国民にもがっかりですね。
      むむむ。どうすればよいのやら。。。

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