2015年9月19日土曜日

安保法案を読んでいなくて反対するのはおかしいと批判した元国会議員の見識を疑う

どこかのテレビ番組で、元プロ野球選手でなぜか国会議員を経験したことのある江本孟紀氏が、安保法案に反対している人が、どれだけ安保法案を実際に読んだかが問題で、ほとんどの人は読んでいないと批判めいたことを言っていた。テレビに頻出する何でも評論家の宮崎哲弥氏も江本氏をフォローするような発言をしていた。

しかし、コメンテーターとして出演しているのか単なるゲストとして出演しているかわからないが、国会議員を経験している有識者としての立場からの発言とすればお粗末きわまりなく、彼の批判は的を大きく外れている。

たしかに、安保法案や戦争法案と通称されている法案は、内閣官房のウェブサイトに全文も概要も掲載されていて、読もうと思えば誰でもが読めるようにはなっていた。また、ハフィントンポスト(The Huffington Post Japan)などでも詳細な解説を掲載していた。

とはいえ、それらを読んでいないからとか目を通していないからといって、安保法案に反対したのはおかしい、ということにはならない。安倍首相はじめ閣僚の国会での答弁や説明から、安保法案の骨子が自衛隊を軍隊として海外派兵ができるようにする危険な法案であり、日本のこれまでの安全保障政策を根底から変えることを目的とする憲法違反の戦争法案であると判断したから反対の声を上げたのである。

法案そのものの検討や解釈、説明は、それこそ国会議員や有識者の役割である。江本氏は、これまでにどれだけそうしたことを真剣にやってきたか、ということだ。そうしたことを自省することなく、わけしり顔で、臆面もなく、茶飲み話的に、さもわかった風に喋る神経を疑う。

そういえば、5月20日の衆議院での党首討論で、共産党の志位委員長からポツダム宣言に関する認識を問われたとき、安倍首相は、「私はまだ、つまびらかに読んでいない。論評は差し控えたい」と答弁したことがあった。そういう答え方もあるのかと感心(?)したが、要するに読んだことはない、ということだろう。ひょっとしたら、憲法も、「まだ、つまびらかに読んでいない」のかもしれない。

こんなこともあった。参議院特別委員会で鴻池委員長の不信任動議に賛成理由の説明をしていた民主党の大塚議員が、「総理に集団的自衛権は自然権ですかと聞いたところ、総理はキョトンとしていた。おそらく自然権という言葉をご存じなかった」と“暴露”した。

政治家としての、ましてや首相としての見識を疑う事例であるが、おそらく文書や文献などをじっくり読んで勉強するなどということをしてこなかったし、していないのではないだろうか。ひょっとすると、安保法案もしっかりと読んでいないのかもしれないし、理解もしていなかったりして・・・。

一般の国民が法案を読まずに反対運動することと、首相が重要文書も「まだ、つまびらかに読んでいない」で政治学の基本概念についても不案内なままに違憲の法案を成立させて政策をゴリ押しするのと、どちらが批判、揶揄(やゆ)されるべきだろうか。

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