2015年9月17日木曜日

安保法案の強行採決って、ありゃ何だ?

安全保障関連法案を審議している参院平和安全法制特別委員会での鴻池祥肇委員長への不信任動議に対して与野党議員が賛否の理由説明をしているのを妻とテレビでずっと見ていた。結構長かったが、コーヒーを何杯も飲みながら終わりまで見ていた。することが山ほどあったのだが、テレビの前から離れられなくなったほど面白かった。

面白かったというと語弊があるかもしれないが、これまでの委員会や本会議での質疑応答とちがって、不信任動議に賛成する野党議員が、ここぞとばかりに安保法案の違憲性について指摘し、安倍首相はじめとする閣僚の矛盾に満ちた説明を批判首尾一貫した主張を展開し、とてもわかりやすく、説得力があったからである。

民主党の福山、大塚両議員、共産党の井上議員、社民党の福島議員の明快で自信に満ちた、そして、感情のこもった演説には感心したし、感動さえ覚えた。政治家の演説の上手さにあらためて感心した。そして、よく調べ、よく勉強しているという印象を受けた。

山本太郎議員の若干不安定な議論の展開も、独自の観点から何が問題かをよく調べた上での事実認識に基づいて一生懸命訴えようとする姿勢が伝わって、悪いものではなかった。とくに、イラクへの自衛隊派遣に関する事後評価が十分に行われていないこと、そして、その当時に、いま審議されているような安保法案があったとしたら、自衛隊の活動内容や自衛隊員の被害はどうなっていたか、という指摘は傾聴に値すると思った。

安倍内閣の面々に比べて、知性と政治理念の面では明らかに大きく上回っていたと視聴者は感じたことだろう。そして、なんで、そうではない面々が政治を牛耳り、良識ある意見に耳を傾けようとしないのだ、と思ったことだろう。

不信任案を出されたときの鴻池委員長の戸惑いというか動揺したような表情としゃべり方、すっと立って委員長席からすたすたと去っていった姿も印象的であった。そして、不信任動議についての理由説明を行った野党議員全員が、鴻池委員長にはすこぶる高い評価をしていたことも、この種の動議に関する演説では珍しいことではないだろうか。

数の力に物を言わせて不信任動議は否決されたが、その後で、委員会が再開されるべく、鴻池委員長が着席した途端に野党議員が委員長席に群がっていった。見ていて、何事が起こったかと思った。採決が終わった後で委員長代理である髭の佐藤議員(筆頭理事)が、「記録を止めて下さい」とか言った後で、記録再開を命じた風でもなかったし、着席した委員長が何か喋った風もなかった。

もみ合っている最中に安倍首相はすたすたと委員会室を出て行った。そんな中で、もみ合いの中にいる佐藤議員が左手を何回も何回も上げ下げしていた。与党議員らに起立を促しているようだったが、野党議員の多くももみ合いの中にいて着席していなかったし、委員長が声を発した様子もなかった。少なくとも、テレビからは委員長の声は聞こえなかった。

そのうち、中谷、岸田の両大臣も席を立ち、委員長も与党議員に守られるようにして委員会室を出て行った。テレビの解説でも、すぐには状況がつかめていなくて、後ほど確認すると言うことだったが、結局、起立多数で可決したということだった。あんな状態で起立多数と判断するのか。

あれが国会での審議と採決なのかとなのかと唖然とする。まあ、強行採決はいま始まったことではないが、ごり押しでも何でも、数の力でやってしまえば勝ち、ということか。良識の府とされる参議院は、安倍内閣のもとで一挙に愚劣の府に化してしまった。

愚かで頑固で信念だけは強固な者には何を言っても通じない。始末に負えない。安倍首相と、その取り巻きの連中は、何を望んで、そんなに愚者ぶろうとするのか。誰を真似て自らを愚かで頑固で信念だけは誰にも負けない人間に仕立て上げて突っ走ろうとするのか。

この安保法案を通してしまうことは、国民こぞってそんな人間になってしまうことだ。そして、日本は、愚かで頑固で知性のかけらも持ち合わせないが信念だけは堅固な人間が集まった非文明国家として歩み始めることになるだろう。

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