2017年5月25日木曜日

加計学園岡山理科大学は文科省から改善意見が出され続けているのに新設学部ってなんで?

加計学園は、話題になっている獣医学部新設を計画している岡山理科大学に加えて、千葉科学大学倉敷芸術科学大学と3つも大学を経営している。

文科省は、設置計画履行状況等調査というのを毎年実施している。どんな調査かというと、文科省の説明によれば、「この調査は,文部科学省令及び告示に基づき,大学等の設置認可及び届出後,原則として開設した年度に入学した学生が卒業する年度までの間,当該設置計画の履行状況について,各大学の教育水準の維持・向上及びその主体的な改善・充実に資することを目的として,大学設置・学校法人審議会大学設置分科会に「設置計画履行状況等調査委員会」を設けて実施しています」ということだ。

要するに、大学設置の認可はしたが、その後、ちゃんとやっているか調べる、ということだ。そして、「設置計画期間中に付された意見への対応が十分でなかった大学等には,完成年度以降も設 置計画履行状況の調査を継続して行うこととしている」。

その結果は、「留意事項」や「是正意見」、「改善意見」が付されて公表されている(25年度までは「留意事項」のみ)。

「留意事項」とは、「大学の設置等の認可の申請及び届出に係る手続等に関する規則(平成1 8年文部科学省令第12号)第13条に基づき,認可を受けた者が設置計画を履行するに当た って留意すべき事項であり、調査が終了したものについてその結果を留意事項として付していたが、複数回にわたって留意事項を付しても一向に改善しない事例があること等の課題も見られたことから、留意事項の内容を明確に示し、調査対象校に誠実な対応を求める観点から」、「是正意見」と「改善意見」が付されるようになった、ということである。

 「是正意見」とは、設置計画履行状況等調査の結果、「早急な是正が求められる場合、又は改善意見を受 けた後に行った」設置計画履行状況等調査の結果、「当該改善意見が求められる事項について不履行がある場合若しくは対応が不十分な場合において、認可を受けた者又は届出を行った者に対して、その早急な是正を求める意見」である。

「改善意見」は、設置計画履行状況等調査の結果、「留意事項の履行状況等に関し、改善を強く求める 事項があり、認可を受けた者又は届出を行った者に対して、その改善を求める意見」である。

設置計画履行状況等調査には、平成28年度では全国の大学の教授、准教授33人の委員によって行われるなど、相当の時間とエネルギーが費やされているようだ。

平成21年度以降の調査結果を見ると、加計学園が経営している上記の3つの大学のいずれにも、平成28年度まで、毎年度、「留意事項」や「改善意見」が付されている。

私立大学には「留意事項」や「意見」が付される大学の方が「意見を付されない」大学よりも多いから、加計学園が経営する大学だけが問題があるというわけではないが、上記3大学は、8年間も問題を指摘され続けているのである。加計学園が経営している3つの大学は、ずっと、「設置計画期間中に付された意見への対応が十分でなかった大学」であるということだ。

こうした大学が新設学部を申請して、それが受理されること自体が異常であると考えるのが常識ある人間のふつうの判断であろう。国の大学行政が、いかにいい加減であることか、ということである。

折しも、きょう、前文科事務次官が、加計学園問題にかかわる記者会見で、「行政がゆがめられた」と発言している。

現在、加計学園が申請した新設獣医学部の設置審査が行われているという。設置審の委員は公表されていて、以下の面々である。

平成28年度大学設置・学校法人審議会(大学設置分科会)専門委員<獣医学専門委員会>平成29年3月

石塚 真由美 北海道大学大学院獣医学研究科環境獣医科学講座毒性学教室 教授
 岡田 利也  大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻 教授
 金井 正美  東京医科歯科大学院医歯学総合研究科疾患モデル動物解析学分野 教授
 久保 喜平  大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻 教授
 佐藤 れえ子 岩手大学農学部小動物病態内科学研究室 教授
 髙井 伸二  北里大学獣医学部獣医学科獣医衛生学研究室 学部長、教授
 二上 英樹  岐阜大学生命科学総合研究支援センター動物実験分野 教授
 藤井 洋子  麻布大学獣医学部獣医学科 教授

獣医学部新設に対して、日本獣医師会は、「今治市及び愛媛県から、構造改革特区・地域再生の提案により、『今治市への大学獣医学部の設置認可』の要望が再三に渡り提出」されていることに対して、平成2 2 年8月5日付で、反対の文書を出している。その中で、次のように言っている。

今回の「特区提案」においては、世界水準の獣医学部を設置するとありますが、医師等の医療専門職養成と同様、実学教育としての獣医学教育の質の確保の要は、専任教員の数と施設・設備にあります。しかしながら、現状の全国16大学の教育改善を目指す上においても最大の課題は専任教員数の確保にあります。新設の獣医学部について、国際的通用性の確保を図り得る水準の専任教員数(「獣医学教育の整備目標」においても学生定員60人に対し専任教員数72人としている)を確保するとするのは画餅にすぎません。

大学設置審で、どういう結果が出るか強い関心を向けざるを得ないが、設置審の委員は、通常の新設学部等の審査ではなくて、特区提案にあるような世界水準の獣医学部の新設という観点から、既存の獣医学部を遥に凌ぐ水準と条件を設定して審査しなければならないことになるから、その責任は重大である。

国会議員とマスメディアは、設置計画履行状況等調査の方法や内容と設置審における審議内容等について詳細に調査、取材することが加計学園問題の究明に必要であることを理解しなければならないだろう。

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