2014年7月28日月曜日

NHKの「調査報告 STAP細胞 不正の深層」を視聴した

予告通りに放映されたNHKのスペシャル番組「調査報告 STAP細胞 不正の深層」を例によって妻とお茶菓子とコーヒーを楽しみながら視聴した。これまで言われていたことを、これまで公開されていなかった事実で補強した感があった。私には少々物足りなかったが、妻によれば、なかなかよくできていて、STAP細胞の不正のことがよくわかったようで、これだけ不正が明らかになっているのに小保方嬢はじめ関係者や理研が何もお咎めを受けずに検証実験を行っていることや、それが許されたり擁護されていることが到底理解できないということだ。確かにそうだ。

未公開実験ノートや若山教授の元留学生の証言、ハーバード大学の教授でバカンティ教授に共同研究を申し入れてSTAP細胞の再現実験を試みたが成功しなかった事例、当該領域の研究者の共同討議によりSTAP論文に掲載された画像の7割に疑惑があること、Nature編集長の談話、笹井教授と小保方嬢が交わしたメール等々、NHKがこれまでの調査で入手していたものが、満を持してと言えば大げさかもしれないが、一挙に公開された。

かつて仕事の関係で某テレビ局の取材に同行したことがある。その取材では、5日間くらいだったと記憶しているが、20~30分のビデオテープを20本くらい使っていた。放映されたのはたかだか5分くらいだった。今回のNスペは50分の番組だったが、放映されなかった映像と音声は、その何十倍もあるだろう。その中には、興味ある事実が数多く含まれていると思うので、順次公開してもらいたいものだ。

「調査報告」と銘打ったところに、事実を淡々と提示するという番組の姿勢がうかがえたが、報告する内容の多さに比べて50分というの短すぎた感がある。「事実は小説より奇なり」ではないが、下手なドラマよりは遙かにドラマチックな今回のSTAP騒動であるので、連続番組として放映してもらいたいと思う。近年はやりの表現を使えば、シーズン(season)1から始めて、しつこくしつこく放映していけば、きっと、エミー賞ATP賞の受賞間違いないと思うのだが。

ちなみに、ウィキペディアによれば、上で言うシーズンとは次のようなことらしい。転載させてもらうことにする。

あるテレビ番組が1年間のうちある期間に放送されるとき、その間に放送されるエピソードのセットのこと。日本では期と訳すことがある。アメリカ・カナダ・オーストラリアで使われる用語で、イギリスではシリーズ (series)という。一方、アメリカでシリーズといえば、複数のエピソードを有する番組のことで、番組(programまたはshow)とほぼ同義である。少ないエピソード数で完結する連続番組(だいたい3~10時間程度)はミニシリーズ(mini series)と呼ばれる。なお、日本でいう(番組・作品の集合を意味する)シリーズは、英語ではフランチャイズ(franchise)と呼ばれる。

小保方嬢の弁護士は、この番組を見て「集団リンチ」だと言ったそうだ。すごい発言をするものだと驚いた。そんなことを言わずに、自信があれば、彼女とともに正々堂々と表立って反論すればよいのにと思う。もっとも、そうした時期は過ぎたし、反論できる材料もないないのだろうから、いまのような対応が最大限ということなのだろう。弁護士なら、証拠主義ということを重々承知しているはずだから、反証材料もない中では、そうするしかないのだろう。

2014年7月26日土曜日

朝顔と野菜

猛暑が続いている。高温注意情報がテレビの字幕に出ている。人間の体温を超える気温を記録したところも。幸い、我が家は市内でも髙地の郊外にあって、しかも高台のてっぺんに位置する緑の多いところで、家のまわりにも木々が多いので、発表される気温よりは2~3℃低い。それでも、暑いことには変わりがなく、老人には要注意。ということで、外出を控えて、エアコンをかけてひたすら家の中で本とパソコンとテレビを相手にしている。

妻はといえば、ゴミ出しと家の内外の掃除に洗濯、洗濯物干しと取り入れ、布団干しに買い物、食事の支度と片付け、風呂掃除と庭への水まきと、猛暑だからといって手抜きすることなくルーチンワークに大奮闘の日々。そして、その合間に趣味の刺繍。うーん、頭が下がる。主婦のたくましさに改めて感心する。

庭の木々にわんさかとまっている蝉が朝早くから大合唱。誘われるように庭に出て朝顔を観賞し、野菜を収穫。今年の朝顔は、種子が悪かったのか育て方が悪かったのか、ひ弱で花のつきが悪い。野菜の苗も元気がないのが多い。写真を撮ったが写りも悪い。でも、せっかくだから掲載しておくことにする。

クマゼミが8匹も群がって大合唱中です。その大音声をお聞かせできないのが残念です。

アブラゼミです。近年は少数派になったようです。
これは、黄色トマトです。皮が少し固く、酸味が強いです。
こんな形のトマトができました
写真では黄色がうまく出ませんが、実物は真っ黄色です。



 



 
花火の打ち上げの音がしたので物干し台へ上がってみた。花火の写真を本格的に撮ろうとすれば、それなりの準備が必要だが、ちっちゃなデジカメを手に持って20倍ズームで撮ってみた。当然、出来のいい写真にはならなかったが、まあ、撮ってみた、ということで、ご勘弁を。
 




 

2014年7月25日金曜日

小保方博士論文の調査報告書に対する早稲田大学先進理工学研究科有志教員の所見公開を大いに賞賛したい

先日公開された小保方博士論文の調査報告書に対して、小保方嬢が在籍していた早稲田大学先進理工学研究科の教授4名が、有志一同を代表して所見を24日に公開し、併せて早稲田大学の学事担当理事や理工学術院長,先進理工学研究科長にも発送したそうだ。貴重な所見と思われることと、有志たちがこの所見を拡散してほしいと願っていると見受けられること、そして、万が一、公開されたページにアクセスできなくなったときのことを考えて、長文ではあるが、以下に全文を転載しておく。

「小保方晴子氏の博士学位論文に対する調査報告書」に対する早稲田大学大学院 先進理工学研究科 教員有志の所見
2014年7月24日
早稲田大学における博士学位論文の不正に関する問題は,本学個別の問題というだけにとどまらず,科学研究や大学における教育,さらに博士の学位の信用にも大きな影響をおよぼす問題です。私たちは,先進理工学研究科の構成員として,また自然科学の研究・教育に携わる学徒としてこの問題に対する大きな危機感を共有しており,本問題の解決に向け、科学的規範と良心にしたがって誠実に行動していきたいと考えております。
 さて,2014年7月17日に「早稲田大学大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」(小林英明委員長)による調査報告書が早稲田大学に提出されました。当日小林委員長による記者会見と概要書の配布が行われ,さらに7月19日に修正処理を施された報告書全文が早稲田大学のウェブサイトより公開されました。
 調査報告書では,小保方氏によって提出され,国会図書館に収められている博士論文が極めて杜撰な内容であること,その作成過程および審査過程に重大な過誤が認められること,さらに早稲田大学ならびに先進理工学研究科の指導体制・審査体制に欠陥があることなどが厳しく指摘されました。その一方で,私たちが学位論文の中で重大な問題点とみなしてきたものが,この調査報告書の中では軽微に扱われている場合が散見されました。自身の責任問題を含めて厳正に臨まなければならないと考えていた私たちにとって,後者の部分には強い違和感と困惑を覚えざるを得ませんでした。
 今後,大学ではこの調査報告書の検討を通じて,この問題に対する見解や処分を公表することとなっております。私たちは,その過程で,様々な論点について透明性を確保しながら,学内外を問わずできるだけ多くの議論が活発に行われるべきだと考えています。
 そこで,数人の有志の見解ではありますが,今回の調査報告書で特に問題と感じた点を,別紙に6項目掲げました。大学の担当部署に提出させていただくとともに,学外の方々にも意見の一つとして公表させていただくことにいたします。ここでは,主として当該博士論文に対して厳正な判断を求める内容となっておりますが,一方で,十分な指導が行われなかったこと,このような論文に学位を授与してしまった責任は極めて重大で,研究科の構成員として重く受け止めております。
 この問題は小保方氏一人の問題に限らず,研究・教育に関する構造的な問題が背後にあります。その一翼を担っているものとして,今一度痛切に猛省しなければいけないと考えています。科学研究・大学教育の原点に立ち戻って,この問題の背景や責任を明らかにしようとすること,また,再発の防止や,より厳格かつ健全な研究・教育・学位審査プロセスの立て直しのために全力で臨むことを誓います。

早稲田大学大学院 先進理工学研究科 有志一同を代表して
岩崎秀雄(電気・情報生命専攻 教授)
小出隆規(化学・生命化学専攻 教授)
寺田泰比古(化学・生命化学専攻 教授)
勝藤拓郎(物理学及応用物理学専攻 教授)

調査報告書に対する所見
1. Tissue Engineering誌論文におけるデータの改竄疑惑への言及が存在しない点
科学研究論文において,データの信頼性を損なう改竄・捏造が致命傷であることは,改めて言うまでもありません。
 しかし,博士論文のもととなっているTissue Engineering誌の論文には,明白と言ってよい画像の改竄(報告書における「実験結果欺罔行為」)が認められています。具体的には,Tissue Engineering誌論文の図2、図3、図4に電気泳動写真が掲載されていますが,まったく異なる遺伝子群の発現パターンに関して,同じゲルの写真を上下反転したり,一部切り抜いて流用したりするといった改竄・捏造が既にネット上でも指摘されています。このうち,図3は,博士論文においても図16として採録されています。
 Tissue Engineering誌の図3は,ネット上での指摘を受け,責任著者のVacanti教授によって,改竄が指摘された4つの遺伝子群のデータを削除する形で修正(correction)されています。その理由は,「類似した見かけのデータを,複数の著者が編集したために起きた過失」とされています。
 しかしながら,同様の図の改竄は,多くの場合Correctionで済むものではなく,様々な科学論文誌においてRetraction(論文撤回)の対象となってきました。実際の写真を検討すると,「過失」というレベルではないことは明らかで,学位取り消しの条件である「不正の方法」に相当するのではないかとの疑義があります。
 にもかかわらず,調査報告書では,「そもそも博士学位論文の条件として査読付き欧文論文が前提となっており,このTissue Engineering誌論文には修正がなされていること」を理由にデータの意図的な改竄(調査報告書に言う実験結果欺罔行為)には該当しないと結論付けています。しかしながら,Tissue Engineering誌において,Vacanti教授は強い影響力を持つと推測されるFounding Editorであり,軽微な「過失による修正」にとどめている編集方針には疑義があります。したがって,この論点については改めて独自の調査がなされてしかるべきと考えます。

2. 公表されてきた学位論文を草稿とみなし,「真の学位論文」なるものが存在し,それをもとに学位取得の妥当性を議論していることに関する疑義
調査報告書では,国会図書館に保管された正本(と通常は受け取れる論文:調査報告書における「本件博士論文」)が,実は草稿に過ぎず,「本来提出すべきであった博士論文」が実在するとの小保方氏の弁明が最終的に支持されています。
 しかし,「本件博士論文」は,3年間にわたって修正されることなく正本として保管・開示されてきたものです。これに対して,調査開始後,委員会に要請されてからかなりの期間を経て提出され,しかも提出一時間前に修正された形跡もある文書を「真の学位論文」と認定する根拠は薄弱に感じられます。
 たとえば,学位審査の公聴会の際に副査が指摘した不備が修正されていないことをもって,「本件博士論文」が公聴会前の論文であるとの弁明を支持しています。しかし,最近明らかにされた経緯によると,その後の小保方氏らのNature論文における不備は,Cell誌,Science誌の査読過程で指摘されていたにも関わらず修正されていません。この対応を見ると「学位論文に関しては副査の指摘に素直に従い,これを修正した」との前提が自明であるとは必ずしも思えません(むろん,それを指導する責任が指導教員にあったはずであることは,調査報告書の指摘通り)。また,公聴会時に回覧されたはずの論文(報告書中における「公聴会時論文」)については,現存が確認されておらず,プレゼンテーション資料が確認されているのみです。プレゼン資料とそれに基づく公聴会時の副査とのやりとりをもとに,「本件博士論文」が草稿であり,それとは別に修正を踏まえた「真の博士論文が存在する」との推論を導いていますが,プレゼン資料が「真の博士論文」とされる論文の内容をそのまま示しているとの前提は,必ずしも自明とは思えません。
 この判断に基づいて草稿と認定された「本件博士論文」の重大な問題点が,調査報告書では最終的に軽微に取り扱われ,事実上免責されていることに大きな違和感を覚えます。代表的なものとして,以下のようなものがあります。

 i) 「本件博士論文」の図10に示されている,三胚葉分化の二つの図は,企業のカタログからの無断転載が認定されています。この図は,学位論文全体の中で最も重要な図であるはずなのですが,常識的に本文に照らして読めば自分が出したデータのようにも読める記載となっており,実験の実在性が問われる部分でもあります。したがって,調査報告書にも述べられているように,著作権侵害行為,創作者誤認惹起行為に加え,科学における重大な不正行為である「捏造」(調査報告書に言う実験結果欺罔行為)に該当する可能性が高いと考えられます。しかしながら,上記の「小保方氏が真に提出しようとしていた最終的な完成版の博士論文」とされるものには図10は存在しないことから,この疑義が否定されています。
 ii) 「本件博士論文」には第2-5章に亘ってまったく実態を持たない(引用されていない)引用文献リストが各章末に付記されています。しかし,「小保方氏が真に提出しようとしていた最終的な完成版の博士論文」とされるものには5章にのみ引用文献がまとめられており,修正されたことが認められています。

「本来提出するつもりであった」と小保方氏が主張する論文については,現時点で公開されておらず,私たちとしては判断材料を持っていません。いっぽう,調査報告書によれば,5月末に紙面で提出された原稿に加え,6月末には電子媒体での原稿を調査委員会は受け取っています。注目すべきことに,電子媒体は提出の一時間前に修正保存された形跡があったと調査委員会は報告しました。このことは当該原稿が「真の博士論文」であることの信憑性を著しく損なっています。まずは5月末に提出された原稿と,電子媒体で提出された原稿を公開していただき,その間の修正個所を明らかにすることも重要なステップと考えます。
3. 大量の無断引用部分について
「本件博士論文」の序章には,20ページの長きに亘って米国NIHの文書が無断転用(コピペ)されています。報告書によれば,事後提出の「真の博士論文」とされるものにも,この部分は残っているとあります。これが著作権の侵害および,調査報告書のいう「創作者誤認惹起行為」に該当することは言うまでもなく明白です。学位取り消し条件の「不正の方法」に該当すると報告書にも明記されています。
 しかし報告書では,この序章部分に見られる「不正の方法」によって,「学位授与に一定程度の影響を与えたとはいえるが,重大な影響を与えたとまではいえず,問題箇所①(注釈:当該箇所)と学位授与との間に因果関係があったとはいえない」と論じています。
 しかしながら,自らの学位論文の背景や立ち位置を論述する序章部分を自らの文章としてまとめることは,学位論文の最も重要な要件の一つであり,それを事実上放棄した行為は,執筆者の学問的な誠実さと能力の欠如を強くうかがわせるものです。こうした論文に対して本来学位授与がなされることはあり得ません。
 このような無断転用を,入学時より早稲田大学理工学部(当時)では厳に戒めてきました。たとえば,小保方氏が初年時に受講した年度の必修の実習科目である「理工学基礎実験IA」の資料(2002年度)では,実験ノートの記録の重要性や具体例が詳述され,さらに「引用とコピー」という項目において「引用なしで,他人の成果を自分の文書に書くことはいわゆる“盗用”である。字からわかるように犯罪に準ずる行為として扱われる」と太字で明記されており,学生はレポート提出時に繰り返し指導されています。
 なお,「時間があれば修正できたはずなのに,事後提出論文に修正されないまま残っていること」もまた,調査報告書において「本件博士論文」が草稿であることの傍証の一つとされています。指摘されてから序章部分を書き直す余裕がなかった傍証とみる推論も同様に可能であるにも関わらず,調査報告書では採用されていない点も指摘しておきたいと思います。

4. 実験ノートの確認方法に関しての記載,および科学的正確性に関する評価が不十分である点
調査報告書では,当該論文を裏付ける実験の実態があったと述べてあります。しかしながら,その根拠となるノートの写しや明確な資料が公開されておらず,第三者としてその論旨を詳しく確認することができません。理化学研究所の調査の過程で明らかになった小保方氏の実験ノートの杜撰さから考えて,大学院在学時のノートや記録が十全であったと考えることには疑義があります(仮に,もし博士論文に関わる実験ノートの内容が十全であるなら,理化学研究所に移籍して以降の実験ノートの不備の責任は,早稲田大学にはないことになりますが,とてもそうは思えません)。その印象を覆すための記述・資料が,本報告書の公開資料には見当たりません。
 より重要な問題として,調査報告書にも明記されているように,検討されたことは論文に書かれている(一部の)実験作業の有無についてのみであり,実際のデータの分析の合理性や科学的正確性について踏み込んで検討されていません。上述のように,この部分においては,たとえばTissue Engineering誌の査読判断に事実上一任しており,通常の学位審査で規範とされる,主査・副査による科学的合理性・正確性の検証を独自に行っていません。これは,科学論文の検証作業としては不十分なのではないかと思われます。

5. 審査体制の不備に関する指摘について
一方で,調査報告書が指摘しているように,先進理工学研究科の審査体制にきわめて多くの問題点があること,小保方氏の審査に関して重大な過誤があったことは明らかです。
 調査報告書では,常田主査,武岡副査の責任について詳述していますが,副査を務めたVacanti教授や大和教授などの学外研究者の調査やその役割についての判断を保留しています。しかしながら,Vacanti氏は公聴会には出席しておらず,Vacanti氏,大和氏ともに事前に博士論文原稿を閲覧していない可能性が指摘されています。もし事実とすれば,審査報告書になぜ名前を連ねることができたのか不可解です。「学外者で責任を問えないため」と小林委員長は7月17日の会見上で説明しましたが,副査は大学院が正式に依頼し,きちんと当該論文を審査していただくために委託する役回りであり,学外在籍副査の審査状況を明らかにし,その責任を明確化することは本調査の要の一つであるはずだったと考えられます。

6. 調査委員会のメンバーの氏名が開示されていない点
調査委員会のメンバーは,小林弁護士以外には公開されていません。このため,理研における調査委員会とは異なり,どの程度の解釈の振れ幅があったのか,小林弁護士以外の委員の見解を正す機会がありません。これは透明性・信頼性を欠く要因であると考えます。
以上

拙ブログでも、早稲田大学内の動きを注目していたが、素早い行動をとった早稲田大学教授の研究者の良心と心意気、気骨たくましい在野精神を見た思いだ。とても、ほっとした。こうした動きに多くの人は賞賛を呈するだろうし、追随する動きも出てくるだろう。

この所見を受け取った学事担当理事や理工学術院長,先進理工学研究科長の対応に注目しておきたい。単に聞きおくとか総長に伺いを立てて、ということにはならないことを期待したい。

ついでにと言ってよいかどうかわからないが、同じ日に、小保方嬢がNHKの取材陣から逃げ回った際にケガをしたというニュースが飛び込んできた。追跡を逃れるために飛び込んだホテルのトイレに逃げ込んだとか、エスカレーターを逆走して逃げ回ったとか言われている。鬼ごっこをしているみたいな様子が目に浮かび、元気で活発なお嬢さんというイメージである。ホテルでも何事かと目を見張ったことだろう。

振り切ってホテルから退出する際に体をぶつけたということだ。どこに、どのようにぶつけたかわからないが、神戸市内の病院で検査を受けた結果、「頸椎ねんざ」と「右ひじ筋挫傷」で全治2週間と診断されたそうだ。そうとう激しくぶつけということだが、私も経験あるが、全面ガラスの閉まっているドアにまともにぶつかったのだろうか。そうであれば、これはものすごく痛い。私の場合は、回りに大勢の人がいたので、かっこ悪いのなんの。かなりの勢いで真正面からぶつかったので、顔面と右膝と右肩を打撲。眼鏡をしていたことと、鼻が高いこともあるが、顔の真ん中が特に痛んだ。それでも、病院へ行くこともなかったので、全治するのにどれくらいの期間が必要だったかわからない。病院へ行っていれば、全治2週間の診断がもらえたかもしれないし、危険防止が不十分と訴えることもできたかもしれないが、そこまで頭が回らなかった。彼女の場合は、右肩が前に出た半身(はんみ)の状態でぶつかったのかもしれない。左腕には、きっと、ハンドバッグを抱えていたんだろう。右腕で、相撲のかちあげのような恰好でぶつかったのかもしれないが、もし病弱の身であったら、そこまで激しく体をぶつけることもできなかっただろうから、彼女は元気いっぱいの毎日を送っていると想像される。

まあ、そなことは、どうでもいいことだが、三木弁護士の談話では、利き腕の右手を負傷し、「まるで犯罪者扱い。右手が痛くて実験に支障をきたしかねず、非常に悔しい」と話しているという、ことだった。

なぜか、NHKの取材方法に疑問を感じず、小保方嬢に同情する気にもならず、彼女の発言がおもしろおかしく聞こえ、それを紹介した弁護士にユーモアを感じてしまう。そういえば、最近あまり見ないが、「なんでだろう、なんでだろう」を売りにしている漫才コンビがいるな。

理研もNHKに抗議したそうだ。いつになく、ずいぶん対応が早いことに驚いた。詳しく事実関係を調べたり、再現で確認するのが理研のやり方ではなかったのだろうか。これも、なんとなくジョークっぽくないだろうか。

(追記:7月26日)上記の所見表明の改訂版が公開された。内容に関しては大きく異なるところはないと言えるが、その一部を転載しておく。まあ、早稲田大学内部の様子が何となくわかるようだ。

2014年7月25日,内外のご指摘を受け,文言を修正させていただきました。どのような指摘を受けて変更したのかも含め,末尾に追記しました。多くRTあるいはシェアしていただいている中での上書きになり,恐縮ですが,差し替えさせてください。
2014年7月25日追記:
 学内外からのご指摘を受け,一部文言を修正させていただきました。

1) 前のバージョンでは「有志を代表して」と書いておりましたが,学内の教員から「誰がこの声明文に同意されているのか,学内外に憶測が広がり,学内外に混乱を招くことになる」との指摘を受けました。実際にほかにもご賛同いただいている教員がおりますが,迷惑をおかけすることは本意ではありませんので「有志一同」と変更させていただきます。
2) 前のバージョンでは,「無断引用」という言葉で,許諾を得ない文章の転載を記載していましたが,引用自体は原則的に無断で行うことが慣習であるため,「許諾を得ない転載」と変更しました。
3) 学外副査の責任に関する部分で,前のバージョンでは,「Vacanti氏は公聴会には出席しておらず,Vacanti氏,大和氏ともに事前に博士論文原稿を閲覧していない可能性が指摘されています。もし事実とすれば,審査報告書になぜ名前を連ねることができたのか不可解です」と記載していました。
  当初,私たちは「事前に」という言葉を「公聴会の事前」という意味で用いていましたが,「審査報告書を書く以前に閲覧していない」ととられる表現でありました。大和氏が公聴会時に論文原稿を閲覧していたことは報告書にある通りで,私どもも承知しております。
  誤解を生む表現であったことをお詫びし,「しかしながら,Vacanti氏,大和氏が公聴会以前に博士論文を通読できていたのかは明らかになっていません(公聴会時の閲覧だけでは論文の審査としては不十分であることは言うまでもありません)。またVacanti氏は公聴会にすら出席しておらず、もしそうであれば、審査報告書になぜ名前を連ねることができたのか不可解です」と訂正させていただきました。
  なお,副査の名前は,調査報告書ではアルファベットに置き換えられ,隠されております。これを実名で公表したことについても,抗議を受けました。しかしながら,副査の実名は既に審査報告書の形で早稲田大学の公式なレポジトリ―から公開されており,広く周知されていること,また副査自体は早稲田大学における役回りであることから実名で表記させていただいたことを付記させていただきます。

4) また、大学のドメイン名の入ったWeb上に本文書が掲載されていることについても抗議がありましたが、私たちは大学本体、理工学術院および先進理工学部執行部にも本文書を送付し、オフィシャルなページで公開していただけるよう依頼しています。

2014年7月22日火曜日

教員採用試験と非正規教員

小・中学校教員の採用試験が、いま、全国で行われている。文科省の資料によると、平成25年度における公立の小学校と中学校の採用倍率は、それぞれ4.49倍と8.08倍である。かなり高い倍率と言える。

上の資料には、採用者数に占める新規学卒者の比率の推移と採用時の平均年齢の推移も掲載されている(下の図)。

 
平成10~22年度までの数値であるが、新規学卒者の割合は半分にも満たない。平均して何回(何年)くらい受験しているか不明だが、この図から、半分以上は複数回受験した末に合格していることがわかる。
 
 
平成22年度における採用時の平均年齢は、小学校で27.8歳、中学校で28.6歳である。22歳で大学を卒業したとして、5年くらい経っていることになる。大学受験に際して浪人した場合や大学在学中に留年した場合、大学院を修了した場合、転職の場合なども考えられるから、5~6回受験しないと合格しない、とは言い切れないが、企業への就職に比べて、就職時の平均年齢はだいぶ高いように思われる。
 
仮に、22歳で大学を卒業して教員採用試験を5~6回受験したとする。では、その5~6年間はどうしていたかということになる。そのことに関する資料を持ち合わせていないので正確なことは言えないが、大学受験のように只管(ひたすら)受験勉強に励んでいた人は少ないようだ。聞くところによれば、非正規教員として教壇に立っている人が多いという。
 
上の資料には、非正規教員数の推移を示した図も掲載されている(下の図)。
 
 
平成17年以降、非正規教員の実数も割合も増えている。平成24年度では、11万3千人、16.1%になっている。少なくない数・割合と言えるのではないだろうか。
 
非正規教員うち、授業だけを担当する非常勤講師が約5万1千人(5月1日に勤務している実数で、教員全体の7.2%に当たる)、正規教員と同じ勤務時間でほぼ同様に授業と校務を行う常勤講師と呼ばれる臨時的任用教員が約6万3千人(8.9%)である。
 
常勤講師は、本来、正規教員が産休や育休で学校を離れている期間、臨時的に任用される代替教員であるが、下の図に見るように、実際は、そうした理由での代替教員としてではなく、「その他」の理由で任用されている常勤講師が年々増加しており、平成24年度では、常勤講師5万8千681人の中で4万1千742人(71.1%)を占めている。そして、その多くが教員採用試験受験浪人(適切な用語かどうかはわからないが)なのだろう。
 
 
正規教員の産休や育休、病気やケガのために代替教員が必要とされることは理解できる。しかし、そうした理由ではなくて常勤講師を大量に任用していることは腑に落ちない。しかも、教員採用試験に合格しなかった者に正規教員とほぼ同様の仕事をさせているのである。これでは、教員採用試験などは必要がないということではないだろうか。
 
採用試験では、常勤講師の経験が無いと不利であるとか、常勤講師を何年かしないと採用されないということもあるようだ。常勤講師を3年やると一次試験が免除されるということも聞いたことがある。これでは、まるで常勤講師の経験が採用試験の受験資格として制度化されているようなものだ。
 
教員採用試験受験浪人にとっては、経験を積むことができることと正規教員に近い待遇を得られることから、ほかのアルバイトをしながら教員採用試験のための受験勉強をするよりはいいのかもしれない。しかし、不合格にした受験者を正規教員と同等の勤務につかせることに任用する側は矛盾を感じていないのだろうか。
 
常勤講師は正規教員と同様の勤務をするわけであるから、受験勉強に十分に時間を割けないことになり、翌年の受験に自信が持てなかったり不安を抱えるなどして受験をためらったり、受験しても試験に失敗したりすることもあり、一度常勤講師をすると何年も繰り返すことになると聞く。
 
試験に合格していない者を常勤講師として教壇に立たせるべきではない言っているのではない。そうした形態で非正規教員を任用することの矛盾を問題にしているのであり、任用する側に問題があると言いたいのである。教育再生実行会議とやらで小難しい議論をしているようだが、そんなことに時間と費用をかける前に、中長期的な教員採用計画の杜撰さを半年契約の常勤講師の任用で糊塗しつづけている現状に、そして、何のための教員採用試験であるかということに、まずは目を向けるべきであろう。

2014年7月21日月曜日

小保方博士論文の調査報告書は上出来の推理小説も顔負け

小保方嬢やSTAP問題にはもうウンザリして触れたくないところだが、ついつい筆をとってしまう(キーボードを叩いてしまう)。

早稲田大学が調査報告書を大学の公式ウェブサイトの「インフォメーション」欄に掲載した。17日の総長記者会見では1週間以内には公表するといっていたが、それからからわずか2日という手早さに感心した。

しかし、目を通してみて呆れた。調査委員の名前は相変わらず記されていないし、墨塗部分がけっこうあった。調査のために多くの個人や組織に事情聴取したようだが、それらに関しては実名表記ではなく、アルファベットを用いてA氏やW氏と記されていた。まあ、実名を出すまでもないということと、実名を出すことによる弊害を危惧したのだろうが、この調査で実名を出されて不利益を被るようなことはないと思われるので、かえって調査の信憑性を貶めることになっているのではないだろうか。

調査内容と結果の記述には、相当詳しく調査をして正直に書かれていると感心した。提出されて学位が授与された後に国会図書館に保管されている博士論文に認められる不正と杜撰さ、そして、学位審査の杜撰さなど、問題点が余すところなくと言ってよい程に詳述されているという印象を受けた。よくも、まあ、ここまでチェックしたかと驚きでもある。

しかし、である。それほど詳細な調査結果が綴られているにもかかわらず、最後に学位取り消しに該当しないという結論には呆れた。何とかしてその結論を導こうとあれやこれやのこじつけが出てくるところは、捏造のプロセスを見ているような気がした。その一つひとつをここで論(あげつら)うほどのエネルギーを私は持ち合わせていないが、出された結論は、時間をかけて行った調査と調査結果の詳述を台無しにしたと言ってよい。調査を担当した委員も事情聴取を受けた面々も、なんて無駄な時間を費やしたのだろう、ということになる。

調査報告書の冒頭から順に読んでいけば、たどり着く結論は学位取り消しとなるにちがいない、ということを予想させる。記者会見での委員長の説明の仕方もそうだった。そこまで不正や杜撰さを詳しく説明しておきながら、最後には当然そうなるだろうと予想させる結論と全く逆の結論が出た。推理小説の大家でも、これほど読む側の推理を覆す結末を用意できないだろう。

下書き論文を微に入り細にわたって検討し、不正や杜撰さを事細かに指摘しておきながら、実は、それが下書きであることが筆者の小保方晴子の供述から判明したので、下書き論文に対する非難は当たらないようなことを言っている。しかも、完成版と小保方が主張する論文にも不正や杜撰さが残されており、それが本当に小保方が言う完成版として提出しようと思っていた論文かは確定できないなどと言う。わけがわからん、とはこういうことを言うのだろう。

ミステリードラマの10回分くらいの脚本が書けそうである。題名は、そう、『なぜ、彼女は下書き論文で博士号を取得できたか』ではどうだろうか。これでは、あまりにもそのまんまでつまらない。うーん、どうするか。後で考えたいが、誰か考えてほしい。

調査委員会は、調査の結果だけを報告し、取り消しに該当する否かを判断するべきではなかったのだ。調査を依頼した早稲田の総長がそこまで求めたのかどうかわからないが、学位を授与するか否かも学位を取り消すか否かも、ふつうは、それらを審議し、決定するのは教授会/研究科委員会や大学評議委員会などの最高議決機関が行うことであろう。だとすれば、解釈や判断を加えることなく、明らかにされた事実を客観的に淡々と記述することに徹すればよかったのだ。そうすれば、最高議決機関の有意義な判断材料になったであろう。言ってみれば、調査委員会は越権行為を行ったことが、いたずらに世間を混乱させて、早稲田大学の品格を貶めることになったと言うことである。

早稲田大学の構成員にも、匿名や墨塗の多いこの報告書が渡され、それをもとに議論するのであろうか。早稲田大学が推理小説の恰好の材料を提供することなく、日本有数の大学としての矜持を保とうとするならば、“この調査報告は十分に参考とするところが多かった”と言って、最低でも学位の取り消しを行い(博士論文に剽窃が見つかり、学位が取り消されただけではなく除籍処分にもなった例もある)、関係者に対する厳格な処分を行うべきであろう。そして、この問題に関連する全ての疑惑に対しても大鉈を振るって解決することが、安倍首相肝いりの教育再生実行会議の座長を務める鎌田 薫総長を頂く早稲田大学に期待されることであろう。

ついでに言えば、STAP問題で名前と顔が知られるようになった川合眞紀東京大学教授(理化学研究所理事)も、この教育再生実行会議の構成員である。鎌田総長と川合理研理事が、教育再生実行会議という、いままさに両人が直面している問題に深く関わる教育再生と銘打った会議の構成員になっていることは、たまたま、と言うにはできすぎで、上出来のブラック・ジョークと言えなくもない。

以下に、教育再生実行会議の趣旨と構成を摘記しておく。こうした会議の座長が鎌田総長であり、構成員の一人が川合理事であることを外国の研究者らが知ったら、どんな感想を持つか興味があるところである。

1.趣旨
21世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を実行に移していくため、内閣の最重要課題の一つとして教育改革を推進する必要がある。このため、「教育再生実行会議」(以下「会議」という。)を開催する。
2.構成
(1)会議は、内閣総理大臣、内閣官房長官及び文部科学大臣兼教育再生担当大臣並びに有識者により構成し、内閣総理大臣が開催する。
(2)内閣総理大臣は、有識者の中から、会議の座長を依頼する。
(3)会議は、必要に応じ、関係者の出席を求めることができる。
3.その他
会議の庶務は、文部科学省その他の関係行政機関の協力を得て、内閣官房において処理する。

2014年7月18日金曜日

下書きでも博士号がとれることを初めて知った

久しぶりに件の教授とおしゃべりした。前期の講義が終了して一段落ということで息抜きに遊びに来たのだ。お互い酒が弱いので、いい年の肥満高齢者なのに、コーヒーとケーキで盛り上がった。といっても、彼の独擅場(どくせんじょう)ではあったが。

コーヒーは私のお気に入りのコロンビアを念入りにサーバーに落とした。ケーキは、教授が来る途中にコンビニで買ってきたのだが、「どれにするか迷ったので」といって、3種類で6つも買ってきた。我が家にはそんなに多くの家族がいるわけではないので、「こんなにたくさん?」と言うと、「おれ、3つは食べるよ」と言ったので、手土産ではなくて、彼と私の2人分のつもりだったことがわかった。彼が甘党なのは知っているが、それにしてもケーキを3つも食べるなんて、私と年が幾つも違わないのに、凄まじいというしかない。

「いまは、お菓子とかケーキとかまんじゅうなんて言わないんだな」、というところから、彼の蘊蓄披露は始まった。「スイーツって言うんだが、そういうのをひっくるめて」。そういえば、やたらとスイーツって言うのが流行っている。

「ところがだ」といって、教授は、「甘いものをスイーツって言っているんだけんども、本当はsweetsのことだから、スウィーツって言ってほしいんだな」とのことだ。そう言えば、最初スイーツって聞いたときにはスイーツっていう甘いお菓子があるのかと思った。言われてみて、試しに『広辞苑』を引いてみると、「スイーツ【sweets】甘いもの。ケーキ・菓子など」とあった。スウィーツは言いにくいからスイーツになったんだろうけど、w を発音しないままで外来語を日本語にしたということなのか。

マレーシアに滞在していたときに、コーヒー(coffee)はマレー語ではコピ(kopi)であることを知ったが、日本語でも f を h に換えてコーヒーと言っている。その国にない/滅多に使わない発音は省略するか母国語で発音しやすいように換えるのはどこの国でも同じだ。フランス語でも単語の最初に来る h は発音しないことが多いのはよく知られている。人気ブランドのエルメス(Hermès)をヘルメスと読んでしまうと、高級感がなくなってしまいそうだ。

「スイートルームという言葉もよく聞くだろう。あれって、sweet roomと思っている人が結構いるんだな。ホテルのスイートルームというと、おしゃれで甘美漂うような新婚さん向きの部屋と思っちゃってるのがいるんだな」と教授。「新婚旅行では奮発してそれらしくスイートルームを予約しちゃいました、へへへ、なんて言った教え子がいたんだ。お・ま・え・は・バ・カ・カ、と言ってやったんだけんども、教えてやったよ」と教授。

これも『広辞苑』によれば、スイートルームは suite room の和製語で、ホテルで寝室・居間・浴室などが揃った続き部屋のことだ。スイートは sweet ではなくて suite なんだ。こちらはスイートが原語通りの読みになっているが、原語では、suite も suite もスウィート(swí:t)と発音する、というのが教授の説明だ。ということなので、スイーツは全くの日本語というわけだ。英語圏でスイーツといっても甘いお菓子も出てこなければ、スイートルームも予約できないということになる。

というようなおしゃべりの間にケーキはなくなり、コーヒーも3杯目に入ったところで、「お騒がせ女史の博士論文の調査結果には呆れたね~」と教授が切り出した。聞きたいと思っていたことなので、「そうそう、どうなん? おれのブログを見た?」と聞くと、「ああ、いいところを突いているよ」と言ってくれた。教授の大学でも、その話題で持ちきりだそうだが、無関心を装うものもいるそうだ。

「調査委員会は審査の仕組みがどうのこうのと言っていたけど、あんなことは指導や審査に当たった連中には屁でもないことなんだ」そうだ。「そんな話は前にもしただろう。博士論文の審査が時には全くいいかげんにやられることは、いま始まったことじゃないからな。そういう輩はどこの大学でもいるし、この件で無関心を装う連中は、そういう連中だな」ということだ。以下は、教授の熱弁をかいつまんで書いておく。

卒論や修論などでも、締め切りに間に合わなくて、下書きだろうがデタラメ書いてあろうが、形式だけを整えて締め切り日に提出、ということもある。その場合でも、そのことを指導者や審査に当たる人間が承知していなければ、そんなことはできないし、最終審査までに十分に完成できるという見通しがなければ、指導者は提出を許可しないのがふつうだ。だから、下書きを審査するなんてことはあり得ない。

下書きを読んで、次に完成版を読むなどと二度にわたって読むなどという面倒なことを誰もしたがらない。下書きを読むのに時間と精力を使っても、それ、下書きでしたから、大幅に書き換えました、なんてことになったら(そうなるのがふつうだが)、全くの無駄をしたことになるからだ。

今回の小保方博士論文は全くの下書きで、しかもハードカバーで製本して国会図書館の蔵書になっている。下書きを高いお金をかけて製本したということ自体が信じられないが、きっと、一冊だけではなく、複数冊製本して誰かに献本するか、所属していた研究室や大学にも残していると思う。ふつうは、少なくとも指導教員や主査にはハードカバー版を渡し、副査などへはソフトカバー版/簡易製本版を渡すから、製本された下書き博士論文は、結構な数があちこちにあるはずだ。少なくとも主査や所属していた研究室と所属大学には保管されているだろう。そうだとすれば、それを下書きなんて毛頭考えていなかったことになる。既にそれらを回収に回ったか処分したかもしれないが、そんなことをすれば、その時点で誰でも怪しいと思うだろうし、噂になる。証拠隠滅ということだ。

それとも、製本は国会図書館用に一冊だけで済ませ、誰も下書き論文を持っていないのかもしれない。証拠を残さないようにするには、そうするかもしれない。そうだとすると、今度は確信犯ということになる。しかも、指導教授や主査などが、そのことを知っていたとか、了解の下でそんなことをしたとすれば、組織ぐるみの隠蔽工作というか、関係者はみんな共同正犯ということになる。

いずれにしても、下書き論文で博士の学位を授与したというのは、前代未聞、世界初、宇宙初、空前絶後の大事件ではないだろうか。そして、それを非としないで学位剥奪に該当しないと結論づけた調査委員会も世界に希なるギネス級の愚劣集団ということになる。調査委員会の結論を真に受けて、その通りの結論を早稲田大学が出すとすれば、早稲田は世界の笑いものになるだろうし、そうしたことを許した/そうしたことに何の批判も懲罰を加えない日本私立大学協会を初め各種の大学協会や日本学術会議、文科省も同列に扱われるだろう。

下書きで博士の学位を授与するなら、早稲田は完成版には2つの学位を授与しなければなりませんね、先生、と言った院生がいる。上手いことを言うな、と感心したら、下書きかそうじゃないかがわからないような学位審査委員会や大学院って、この大学にもないんですか、と真面目なわけしり顔で聞いてきたので、院生というのはけっこう回りのことをよく見ていると、これも感心した。

不正の方法がどうのこうのと調査委員会はご託を並べていたが、そんなことを問題にする以前に、下書き論文に学位を授与したことが大問題であることを何で指摘しないのか、ということだ。まあ、調査委員会は、いかにして学位剥奪にならないようにと数か月もかけて模索し続けたんだろうから、ご託を並べなければ報告書を完成させることができなかったということだな。調査委員会じゃなくて、不正を不正としない捏造委員会ということだ。もう超有名人だから小保方晴子と呼び捨てにしてもいいだろうが、彼女は、弁護士によれば、ほっとして、ありがとうございます、と言っていたそうだ。反省もしているといってるそうだけど、口が達者な人だな。

博論審査に落ちたり、不正を行って学位が取り消されたり剥奪されると、ふつうは、その大学で学位を取ろうと考えたりしないだろうし、その大学も申請を受け付けようとはしないだろう。審査委員になってやろうなどという奇っ怪な人がいないからだ。早稲田の総長は、再審査みたいなこともあるようなことを言っているが、そんなことをすれば、それこそ早稲田大学はトンデモ大学に成り下がってしまうだろう。

以上が教授が熱く語った内容である。それにしても、下書き論文で学位を取ったとか、下書き論文なのに、それを見過ごして/わかっていて学位を授与したというのは驚愕的事件に違いない。どんな顔、どんな心境で、学位授与式に臨んだのだろうか。しめしめ、といったところであっただろうか。心苦しかったんだろうか。小保方晴子は全ての問題に決着を付け、新しい道を歩む準備をした方がいい。

2014年7月17日木曜日

小保方博士論文の調査委員会の記者会見を視聴して唖然とした

またまた唖然とさせる(本当は反吐が出ると言いたいところだが)記者会見があった。小保方晴子さんの博士論文に関する調査委員会委員長と早稲田大学総長の記者会見の生中継を視聴した。午後5時からだったので、ちょっとしたアルバイトを終えて帰宅してからパソコンで視聴できたのだが、あっという間の2時間半だった。この記者会見を生中継したニコニコ動画は、マスメディアができない/しようとしない完全生中継を行った。賞賛に値するだろう。

この中継の録画と調査報告書は、おそらく貴重な「早稲田大学遺産」になることだろう。杜撰で不正に満ちていて、杜撰な審査で合格した博士論文にもかかわらず学位取り消しに該当しないということを世に公言した歴史的事実を記録することになったからである。そして、不貞不貞しく、人を小馬鹿にしたような態度で記者の質問に答えていた早稲田出身の調査委員長は、早稲田大学の誉れとして大学史の一頁を飾ることになるだろう。

会見場で配付された資料には、次のようなことが記されている。

2.学位取り消し規定の該当性
(1)早稲田大学学位規則第23条の要件
早稲田大学における学位取り消しの要件は、「不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明したとき」である。
(2)学位取り消し規定の解釈と適用「不正の方法」
不正行為を広く捉え、過失による行為を含むとした上で、「著作権侵害行為、及び創作者誤認惹起行為は不正行為にあたる。」と認定した。但し、「不正の『方法』といえるためには、不正行為を行う意思が必要と解釈すべきであるため、過失による不正行為は「不正の方法」に該当せず、「不正の方法」に該当する問題箇所は、序章の著作権侵害行為及び創作者誤認惹起行為など、6箇所と認定した。
(3)学位取り消し規定の解釈と適用「不正の方法により学位の授与を受けた」
「不正の方法」と「学位の授与」との間に因果関係(重大な影響を与えたこと)が必要と解釈すべきであるところ、本研究科・本専攻における学位授与及び博士論文合格決定にいたる過程の実態等を詳細に検討した上で、「上記問題箇所は学位授与へ一定の影響を与えているものの、重要な影響を与えたとはいえないため、因果関係がない。」と認定した。その結果、本件博士論文に関して小保方氏が行った行為は、学位取り消しを定めた学位規則第23条の規定に該当しないと判断した。

持って回った言い方とは、このような言い方を言うのだろう。学位規則第23条の要件を素直に読めば、小保方さんの博士論文(とされるもの)は、(2)で述べているように、6箇所もある「不正の方法」を駆使して作成され、それによって学位の授与を受けた事実が判明しているのではないか。それを、上記問題箇所は学位授与へ一定の影響を与えているものの、重要な影響を与えたとはいえないため、因果関係がない。」と認定し、学位取り消しに当たらないと言うのである。

では、調査委員会が言う「不正の方法」と「学位の授与」との間の因果関係とは、どのようなことを指しているのだろうか。「不正な方法」で論文が書かれても、それが「不正な方法」によって「学位が授与された」と認定されなければ、「不正の方法」と「学位の授与」との間には因果関係がない、と言っているのである。どうも、(2)で言っている「不正の方法」と(3)で言っている「不正の方法」とは、指している内容が異なるようだ。

(2)で言っている「不正の方法」というのは、「著作権侵害行為及び創作者誤認惹起行為」を指している。創作者誤認惹起行為という恐ろしげな言葉は法律用語らしく、委員長は、何だかんだと屁理屈をこねて剽窃や盗用という言葉を使わないようなことを言っていたが、なんのことはない剽窃や盗用のことである。人を誑かそうとしているだけである。

(3)で言っている「不正の方法」は論文作成上の「不正の方法」ではなく、審査委員への賄賂などのことを指しているようだ。金に目がくらんだか弱みを捕まれていて脅されたことで審査を甘くしたり不正を見逃したりして合格させたことが学位授与につながった場合を指しているのだろう。

そして、「不正の方法」を(3)に限定して「重要な影響」と言っているに過ぎない。要するに(1)~(3)は何ら論理的に展開されているのではなく、(1)で言う「学位取り消しの要件」を反故にするために(3)を用意しているというわけだ。論文作成上の不正には目をつぶる、ということだ。これでは、早稲田では、(3)で言う「不正の方法」でなければ、剽窃も盗用もご自由に、ということになってしまう。

製本されて国会図書館に納められた学位論文は“下書きであったことが明らかにされた”ということだ。これにもビックリだ。調査している最中に完成版の提出を求めて、それを見たら不正は認められなかった、と説明していた。調査委員会は博士論文の審査をやり直したつもりなんだろうか。ふざけるのも大概にしろ、と言いたい。学位が授与された後で書き直すなんてことがあっていいものか。しかも、剽窃、盗用が発覚してから、本人が学位論文取り下げを申し出たと言われている。下書きを製本して提出し、知らんぷりしていたことは、どう説明するつもりなのか。偽札を使っていて、バレたら本札を後出しすれば許されるのか。

国会図書館は、下書きを正規版として登録していた(させられていた)のだから、被害者の立場になるのではないか。偽札をつかまされていたことと同じだ。騙されていたと言うことだ。こういうのは文書偽造の犯罪ではないのか。

総長は、会見で、これから報告書を精読して、当該研究科の会議などで議論するようなことを言っていた。記者からの質問には、調査報告書の結論に従うとは言わなかったが、最終的には総長が判断すると述べただけで煮え切らない態度であった。聞けば法学者だそうだ。どんな結論を出すか注目したい。

ひょっとすると、この報告書も下書きでした、ということになるとジョークも行き過ぎだが、早稲田大学の構成員が、今回の調査結果をどう見て、どのような行動をとるのか、そして、全国の大学や研究者、文科省が、早稲田大学の対応をどう評価するのか注目されるところである。早稲田大学内から、そして、各大学や研究者から何も発せられないとしたら、日本の大学は不正を不正と判断できない/しようとしない輩のデタラメが大手を振って名ばかり学位を乱発する低劣愚鈍で口だけ達者な集団とみなされるだろう。そして、形だけ不正防止を唱えるだけで不正を見逃す文科省は、教育研究、学術機関を適切に管理監督する能力のない無用の省庁と見做されるだろう。

2014年7月16日水曜日

「STAP現象」の検証実験をするための小保方嬢専用の実験室の写真と図面が公開された

理研は、7月15日に、「STAP現象」の検証実験をするための小保方嬢専用の実験室の写真と図面をウェッブに掲載した。そこには、「小保方研究ユニットリーダーによる検証実験は、以下に示す実験室(理研CDB内に設置)において、研究不正再発防止改革推進本部が指名した立会人の下に行います」という一文が添えられているが、どういう意図があって、このような中途半端な写真と図面を公開したのだろうか。人をバカにするのも好い加減にしろ、という声が聞こえそうだ。

論文の捏造や研究不正に関わる数々の疑惑を引き起こした張本人のために、このようなお膳立てをしました、ということが言いたいのだろうか。空き室を利用して新たに作ったとされる実験室は、STAP細胞が作成されたと大々的に発表したときにマスコミがこぞって紹介したド派手な色彩の壁やムーミンの絵で飾られた実験室と大いに違って、地味~な印象を受けるが(これが普通の実験室なんだろうけど)、なぜ、わざわざ、新たな実験室を用意したのか理解に苦しむ。あのド派手な実験室は、どうしちゃったんだろう。壁の色を塗り替えたり、ムーミンの絵を除けたりして、別の用途に供されているのだろうか、とても気になる。

空き部屋を新しい実験室にしたっていうことは、それなりの費用がかかっているだろうから、あのド派手な研究室はどうなったかの説明と、この実験室のために要した費用も掲載しておくべきではなかったか。

写真には監視カメラがシンク(流し台)の上と、それと近い壁際に設置されているのが写っている。この2台で実験室の隅々まで24時間監視できるというわけか。それと、この実験室への入退出は、IDカードで管理されるそうだ。なにやらスパイ映画もどきだが、天下の理研で、しかも生命科学の研究センターなんだから、どんなIDカードか知らないが、そんなカードではなくて、生体認証によって入退室の管理を行えば、もっと、それらしくなったのに、と思う。

加えて、実験に際しては研究不正再発防止改革推進本部が指名した立会人を置くようだ。仲間内で指名した立会人なんて聞いたことがないが、監視のための立ち会いが期待されているわけでもなさそうだ。7月1日に理研が発表した小保方ユニットリーダーが参加する「STAP現象の検証計画」の進め方には、「小保方RULは、体調が万全とは言えない状況であるため、第一段階としては、あらかじめ改革推進本部が指名した者の立ち会いの下、準備的に検証計画に参加させる。この場合、マウス個体由来の細胞しか扱わない実験環境とし、培養細胞の実験環境への混入を防止するとある。なんのことはない、優し~く労(いたわ)ってくれて失敗しないように実験に協力してくれる者のことを立会人と呼んでいるようだ。

見方によれば、厳重な監視の下で実験させる、と言えるが、その実(じつ)は腫れ物に触るように大事大事にして“実験していただく”ための措置ということのようである。

私のような老人なら時間を作ろうと思えばいくらでも作れるから、監視カメラなど設置せずに、希望を募るなりして老人をたくさん配置すればいいのに、と思ったりする。実験に詳しくなければとか、専門家でなければ、なんてことは、今回のような実験の不正を監視する際には、たいして重要なことではないんじゃないかな。こういう事をしたら怪しいとか、こういう風にしていないとちゃんとやっていないことになる、ということを教えてくれれば、謹厳実直な老人なら、十分に役に立つと思うが。

もっとも、居眠りしてしまうような老人では困るが、老人の居眠りは浅いので、何か異変が起きれば、すぐに気がつくし、居眠りしているようで居眠りしていないことも多いので、そんな老人を何人か立ち会わせれば、実験をしている者は気が抜けないし、不正しづらいに違いない。それに、若いバリバリの研究者が緊張し続けて立ち会うよりは、よっぽど長い時間にわたって監視し続けることができるだろう。

報道によれば、「理研広報室によると、小保方氏は現在、体調の良い時に出勤し、別の部屋で実験技術上の勘を取り戻す作業に取り組んでいるという。この日、公開した実験室で、実際に検証実験を始めるには、あと1、2か月かかるとみられる」(YOMIURI ONLINE 7/15 23:14)ということで、「小保方氏は今月から11月末までの5カ月間、実験を行う予定で、現在は実験計画を立てたり試薬を準備しているほか、長期間実験から離れていたため実験器具を使って手の動きを慣らしているという」(産経ニュース 7/15 17:32)ことだそうだ。

“実験技術上の勘を取り戻す”作業のために別室も用意されている。どんな部屋か見てみたいものだ(ひょっとしたら、あのド派手な実験室か?)。しかも、勘を取り戻したり手の動きを慣らすのに1、2か月も猶予を与えている。どれほど難しい技術か知らないが、それだけの訓練期間があれば、よほどの不器用者でなければ、初心者でも実験技術を身につけることができるのではなかろうか。怪我で休場して復帰のためにリハビリに励むスポーツ選手やコンサートへ向けて集中的に練習に励むピアニストではあるまいに。2か月分の給料付きで私に教えてくれたら、代わりに実験をしてやってもいいぞ。それに、勘を取り戻して手の動きを慣らすのなら、小保方嬢と捏造に荷担した仲間に捏造の再現実験をさせた方が確実で早道だし、問題解明には有意義だと思うが。

しっかし、理研の対応は常軌を逸している。何もかも公開して、まずは全力で不正の究明と始末をつけることを優先すべきである。それなくして、不正の防止も有意義な科学的発見も、理研の存在意義を高めることもできないだろう。

2014年7月14日月曜日

サッカーW杯の決勝戦は素晴らしかった

サッカーのワールドカップ決勝戦を観戦した。といっても、テレビの録画でだが。生中継が午前3時からということで、「よしっ!、早起きして」と意気込んだが、残念ながらというか当然のことというか、試合開始の午前4時にも起きれなかった。念のためと録画していたので(内心は初めからそのつもりだったということかもしれない)、昼食を済ませてから、妻と二人でゆっくりと録画観戦をした。

結果を知ってからの観戦ではあるが、いやー、素晴らしかった。ドイツとアルゼンチンの双方ともに決め手を与えない攻防が続き、これぞ決勝戦というハイレベルの試合に興奮した。

延長戦後半、残り時間が少なくなってきたところで、途中出場の22歳の若きゲッチェがパスを胸で受け止めボレーシュート。見事にゴール。一瞬の出来事。まさにラッキー・ボーイ。ゴールを決めた嬉しさが迸(ほとばし)る満面の笑みで駆け回る姿にテレビの前で拍手喝采。双方ともに大きなミスや雑なプレーがなく緊張した攻防が続き、惜しいシュートの応酬に歓声とため息に包まれた場面が何回となく繰り返された末の、まさに劇的な1点であった。

試合が終わると、余韻を残したまま、選手やら関係者やら誰かわからない人たちが不規則にというか無規制にというかピッチで抱き合ったりしている。解説者も何の説明もできないような時間が過ぎていくと、あれっ、と思うほど、淡々とというか、ダラダラというか、表彰式らしきものが始まった。式次第に則って仰々しく進められる表彰式を見慣れている者には不思議な光景に写った。

観客席の階段をドイツのゴールキーパー・ノイアーが上っていった。最優秀ゴールキーパー賞(ゴールデン・グローブ賞)の受賞だ。トロフィーを受け取り、居並ぶ面々(大会役員か?)らと握手し、列席のドイツ・メルケル首相とハグ。次いで、アルゼンチンのメッシが俯(うつむ)き加減で、面白くなさそうな顔をして階段を上っていく。最優秀選手賞(ゴールデン・ボール賞:MVP)の受賞。同じようにトロフィーを受け取り、握手をしていく。最後に握手した人が何かを語りかけられたときに、少し表情を崩した。「メッシ、よくやった。笑え」とでも言われたのだろうか。それでも、すぐに無表情になって、トロフィーもった左手をダラッと下げたまま階段を降りてピッチに戻っていた。トロフィーを、ポイッと地面に投げてしまうのではないかと思った。

泣くでもなければ悔しそうにするでもなく、終始無表情でいたメッシがすごく印象的であった。優勝できなかったことと、決勝戦で得点できなかったにもかかわらず、最優秀選手に選ばれたことに複雑で整理がつかない思いであったのだろう。トップに君臨し、期待を一身に集める選手にしかわからない心境であろう。

表彰式が終わらないうちに録画が終わってしまったので、その後のことはわからないが、私たち夫婦の今年のワールドカップも終わった。また、4年後を楽しみに待つことにしよう。

2014年7月9日水曜日

なぜ、STAP細胞問題は早期に解決しないのか

STAP細胞をめぐる問題が一向に解決する様子のないままに過ぎていき、その間にも、不信感を募らせる情報が次々と目に飛び込んでくる。いったい、この国は、どうなっているのか。

司馬遼太郎流に言えば、この国のかたち、というのだろうか。鉄槌を下されないとわからないが、鉄槌を下されるとは毛頭考えないで高を括っていて、鉄槌を下されても、鉄槌を下されたことを理解できないで、鉄槌を下されたことを忘れてしまう。そういう人たちがリーダーとして君臨し、鉄槌を下したと思っている人も鉄槌を下したと思って満足してしまい、鉄槌を下した相手の暴走を止められない。

7月8日付のMSN産経ニュースによれば、下村文部科学大臣が、不正の実態が解明されるまで検証実験の凍結を求めた日本分子生物学会の声明に対して、理研の検証実験を意義あることだとあらためて強調し、小保方嬢が実験に参加することに対しては、「科学界を含め、社会に対する説明責任を果たすために、透明性を確保し科学的に検証すると聞いている」と述べたという(記者会見の動画)。

STAP論文をめぐる問題と、その後の理研の尋常ならざる対応に関して、教育・科学行政の最高責任者が、教育や科学の観点から知ろうともしなければ、考えてもいないし、考えようとしない、ということが如実に表れている発言だ。こうした大臣を頂く文部科学省の良識ある職員は切歯扼腕していることだろう。

同じ日付のMSN産経ニュースには、Natureに提出した撤回理由が、共著者の合意がないまま若山教授の説明とは全く逆の説明に書き換えられていて、しかも、誰が書き換えたのわからずに水掛け論になっていることが報じられている。事実とすれば、撤回理由書も改竄されたことになる。性懲りもなく・・・、救いようがない、というところだが、ミステリー小説作家もビックリだろう。
 (追記:7月11日-「若山さんがNature誌に送った取り下げ理由(5)のSTAP幹細胞の遺伝子解析の結果について説明した英文が誤読を招くもので、それによって若山さんが意図した意味ではない解釈をされたことが原因でした」ということのようです」-書き換えの事実はなかったということだが、言語の違いが引き起こしたミステリアスな一件である。語学に達者な方は、Natureに提出した撤回理由と理研が公表している撤回理由書の日本版とを比較してみるといい)。それにしても、仮訳とはいえ、日本版を公表する前に関係者の誰もが気がつかなかったというか、見過ごしていたというのも解せないことだが・・・。

理研は、7月2日に、広報ページで、STAP細胞に関する研究論文の取り下げを発表している。その中に、STAP論文の主要著者たちのコメントも掲載している。コメントというのは便利な言葉でよく使われるが、広辞苑には、「事件・問題などについて、解説や意見を述べること。評言。論評。」とある。ふつうは、コメントと言えば他人の行為や客観的な対象とか出来事に対する意見の意味で使われるから、自らの行為に対して使うことには違和感を感じる。

今回の場合は、自らが犯した不正や共著者として不正を防げなかったことを認めて謝罪しているわけであるから、「コメント」ではなく、素直に「謝罪」や「おわび」とすることが知識人と知識人の集まりである組織の常識であり、誠意であろう。もっとも、これまでの言動からすれば、とてもとても知識人とは言い難いから、「コメント」とするのも宜(むべ)なるかな。それにしても、今さら何を、という感じで、遅きに失するとは、こうしたことを言うのだろう。

小保方嬢のコメントだけ2日遅れの4日に追加されているが、掲載順は、STAP論文の著者順に準じているようで、小保方嬢のコメントが最初にあげられている。どれも短いものだから、下に再録しておく(青字の部分)。なお、誰のコメントかは敬称を略して( )内に記しておく。ついでに言えば、理事長やセンター長の声明のようなものが一切ないのは、とても違和感を感じる。通常の組織ではありえないことではないだろうか。組織をあげて問題の解明に当たってきた/いるはずなのに、この広報ページは、実に淡々としていて、他人事のような広報ぶりである。見ようによっては、客観的で科学研究の組織らしいと言えないこともないけれど、やっていることは、それとは反対で、ひどく非科学的であり、固まってしまうようなユーモア、ジョークの類と言えなくもない。そういえば、ずっと以前に、「責任者出てこい!」を売りにしていた漫才があったな。

今回起こった論文の不備は、自身のデータ管理のみならず、共同研究者間でのサンプル共有・データ共有の在り方・確認方法を含め、筆頭著者である私の至らなさが招いた結果であると深く反省しております。理化学研究所の皆様、共著者の皆様はじめ、多くの方に多大なご迷惑をおかけしてしまったことを重ねてお詫び申し上げます。今後はSTAP現象・STAP細胞の存在を実証するために最大限の努力をして参る所存です。(小保方晴子)
 
Nature誌へ掲載した2つの論文の撤回について
先に、Nature誌に掲載されたSTAP現象に関する2つの論文が、本日正式に撤回されました。撤回によって、皆様のご期待を裏切る結果となり、大変申し訳なく思っております。これらの論文は発表直後から図や文章に多数の疑義が指摘され、そのうちのいくつかは論文の根底に関わる重要なものでした。そこで、論文の撤回は研究者にとって最もつらい選択ですが、3月10日に論文の撤回を共著者に呼びかけました。その後、2点の疑義が不正認定され、さらに新たな疑義が複数指摘されていることからも今回の論文撤回は必要な処置と考えます。(若山照彦)
 
論文撤回に際して
私どもが発表した2つの論文に、多くの誤りが存在することが判明し、撤回いたしましたことは、研究者として慚愧の念にたえません。また、こうした誤りを事前に発見できず、それらを回避し不正を防止する指導を徹底しきれなかったことを、共著者として痛切に後悔し反省しております。こうした事態に至り、多くの混乱と失望を生みましたことを、心中より深くお詫び申し上げます。今回の撤回により実験的な根拠が失われ、その後新たに判明してきた細胞の遺伝子型などの齟齬などを照らしあわせると、STAP現象全体の整合性を疑念なく語ることは現在困難であると言えます。研究所の若手研究者育成を担うべき副センター長としても、本件に関する重い責任を感じ、その進退については理研の判断に従う所存です。(笹井芳樹)
 
Nature論文撤回について
論文作成過程における数多くの誤りから、本論文が撤回される事態に至りました事は、共著者として誠に遺憾であり、慎んでお詫び申し上げます。本件に係る疑問点につきましては、今後もその解明に真摯に対応していく所存です。(丹羽仁史)

各人のコメントにどのような印象を持つかは人それぞれだろうが、小保方嬢のコメントには表題がなく、いきなり本文に入っている。杜撰な実験ノートが笑いものになっているが、このコメントにも同じような杜撰さが見られる。学位論文やSTAP論文でしたように、何かの文章をコピペしたのではないかと勘ぐってしまう。コメントを出した他の3人に遅れること2日の間に、コピペ元を探していたのかもしれない。ひょっとすると、他の3人のコメントをコピペしたものを提出して止められたか叱られたのかもしれない。とても科学論文を書いてきた人が自ら書いたものとは思えない。ひょっとすると、筆頭著者にはなっているが、STAP論文は一字も書いていないのではなかろうか。そのことが、彼女の不可解な言動を可能にしているのかもしれない。

「共同研究者間でのサンプル共有・データ共有の在り方・確認方法を含め」と「今後はSTAP現象・STAP細胞の存在を実証するために最大限の努力をして参る所存です」という物言いには、俗な表現を使えば、仰け反ってしまった。不正行為を行った事実につては何も触れず、まさに他人事のような“コメント”である。STAP細胞の存在を実証したことを宣言した論文が捏造論文であったことなどどこ吹く風で、最大限の努力とは・・・。彼女のコメントを「査読」した人はいないのだろうか。それとも、しっかり査読を受けて修正してのことだろうか。もし、そうであれば、恐ろしいことだ。

毎日新聞 (7月8日:7時0分配信)によれば、理研の発生・再生科学総合研究センター長である竹市雅俊氏が、今年4月に理研改革委員会に内部調査結果を報告した際、「信頼性がないと私が判断した(職員らの)発言や資料は削除した」と述べていたという。そして、「改革委の元委員によると、そうしたセンター長の姿勢が問題視され、センターを解体すべきだという厳しい提言(6月12日)につながったという」ことも報じられている。

問題を積極的に解明しよう、しなければならない、という姿勢は微塵も感じられない。科学者であれば、 精粗様々な情報を集めて分析しようとするのではないだろうか。「信頼性がないと私が判断した」という発言は、かつて野球審判・二出川延明が「俺がルールブックだ」と言ったというエピソードを彷彿させる。二出川の場合は武勇伝として語ることができるが、竹市センター長の場合は、すでに理研内外で痛いところを突かれていることを重々承知の上で、自己保身のために何かの勢力に唯々諾(いいだくだく)として従う姿勢としか写らない。センター長として判断すべきところを大きく取り違えていることに気がつかないのだろうか。理研内外からの期待を裏切っているという意味で、センター長の役割を果たしていないというべきであろう。

報道によれば、文科省は、STAP細胞の問題など研究不正が相次いだことから、インターネットで疑問点が指摘された場合でも調査することなどを含んだ「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(案)を7月2日に発表した。そして、翌3日から8月1日までパブリック・コメントを募集している。

STAP細胞論文の不正を暴くことにインターネットでの議論が大いに貢献した、というより、インターネット上で不正が暴露されなければ、おそらくこれほど早くに不正が明るみに出ることはなかったであろう。ようやく文科省はインターネット時代に即応した対応をとることになったわけだが、これまでの文科省の情報収集能力というか情報収集における姿勢に疑問を覚える。

その種のガイドラインはこれまでにも詳細なものがあったし、平成18年に行われた「研究費の不正対策検討会(第1回)」の議事録には、研究費が国民の税金で賄われていることについて盛んに言及されている。

今回のSTAP論文問題は、これまでのガイドラインに照らしても、多額の公的費用を用いて行われた著しい研究不正であることは明々白々である。にも関わらず、文科省は調査や監査、指導を積極的に行ってこなかったし、行おうともせずに、来年度から適用されるガイドラインの改定という事務作業を進めることで問題を先送りしている。しかも、その作業のための予算として5千5百万円を見込んでいる(25年度は5千6百万円)。予算を獲得、消化できる仕事が生まれて、STAP細胞論文問題さまさま、というところか。

研究者の国会ともいうべき日本学術会議も、3月19日に「STAP 細胞をめぐる調査・検証の在り方について」という会長談話を出したきりで、その後は何も行動を起こしていない。談話は、まあ、一言くらい言わないと、という程度のもので、学術会議の提言でも何でもないから、不正を行った面々や不正を見逃している組織にはもとより、文科省や文科大臣にも何の影響力もない。

なぜ、STAP細胞問題は早期に解決しないのか、といった疑問が、これで解消したわけではない。ただ、言えることは、研究不正をそれほど重大な問題と認識していないことが、問題を拡散させ、有耶無耶にしている、ということである。

明らかに法律に抵触していると見做されれば、それは違法行為=犯罪である。誰かに迷惑をかけたり、誰かが損害を被ったことが明らかであれば、損害賠償をしなければならない。ところが、研究不正に関しては、不正を行った当人も第三者も、そうした認識をもたない。「えっ、誰が、どんな迷惑を被ったの?」、「誰かに損害を与えたかしら?」という程度の感覚ではないだろうか。こうした鈍感さが、“STAP細胞があるか否かが問題である”とか、“再現実験で検証してからでないと問題は解明されない”というような問題のすり替えにつながっている。

STAP論文の著者たちが、「コメント」で表面上は「謝罪」しながら、何ら具体的な償いに触れていないのも、理研が再現実験と称して不正を行った人間を処分することなく実験に参加させ、以前と同様に職員として待遇しているのも、研究不正を一般的な意味での不正行為と認識していない/できないからである。これは、倫理観の問題ではない。研究不正というものが、不正として認識されにくい行為になってしまっている、ということである。そこに、「科学」を錦の御旗に掲げて己の不正から目をそらさせようとする言動が入り込む余地を与え、第三者は、そうした言動を盲目的に支持してしまうようになる。

研究不正が多額の公費を用いて行われたとすれば、納税者に多大の損害を与えたことになる。科学研究に多額の資金が必要であることは認められるとしても、それは研究が適切公正に行われることを前提にしている。論文を撤回し、謝罪したことは不正行為を行ったことを認めたことであり、当然、その不正に用いた費用を返却することを申し出なくてはいけない。科学に名を借りて、組織ぐるみで隠蔽工作のようなことをして問題解決を先延ばしすることは許されないだろう。国民の信託を受けた行政機関である文科省や国内有数の知が結集している日本学術会議の責任は重い。