2014年7月17日木曜日

小保方博士論文の調査委員会の記者会見を視聴して唖然とした

またまた唖然とさせる(本当は反吐が出ると言いたいところだが)記者会見があった。小保方晴子さんの博士論文に関する調査委員会委員長と早稲田大学総長の記者会見の生中継を視聴した。午後5時からだったので、ちょっとしたアルバイトを終えて帰宅してからパソコンで視聴できたのだが、あっという間の2時間半だった。この記者会見を生中継したニコニコ動画は、マスメディアができない/しようとしない完全生中継を行った。賞賛に値するだろう。

この中継の録画と調査報告書は、おそらく貴重な「早稲田大学遺産」になることだろう。杜撰で不正に満ちていて、杜撰な審査で合格した博士論文にもかかわらず学位取り消しに該当しないということを世に公言した歴史的事実を記録することになったからである。そして、不貞不貞しく、人を小馬鹿にしたような態度で記者の質問に答えていた早稲田出身の調査委員長は、早稲田大学の誉れとして大学史の一頁を飾ることになるだろう。

会見場で配付された資料には、次のようなことが記されている。

2.学位取り消し規定の該当性
(1)早稲田大学学位規則第23条の要件
早稲田大学における学位取り消しの要件は、「不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明したとき」である。
(2)学位取り消し規定の解釈と適用「不正の方法」
不正行為を広く捉え、過失による行為を含むとした上で、「著作権侵害行為、及び創作者誤認惹起行為は不正行為にあたる。」と認定した。但し、「不正の『方法』といえるためには、不正行為を行う意思が必要と解釈すべきであるため、過失による不正行為は「不正の方法」に該当せず、「不正の方法」に該当する問題箇所は、序章の著作権侵害行為及び創作者誤認惹起行為など、6箇所と認定した。
(3)学位取り消し規定の解釈と適用「不正の方法により学位の授与を受けた」
「不正の方法」と「学位の授与」との間に因果関係(重大な影響を与えたこと)が必要と解釈すべきであるところ、本研究科・本専攻における学位授与及び博士論文合格決定にいたる過程の実態等を詳細に検討した上で、「上記問題箇所は学位授与へ一定の影響を与えているものの、重要な影響を与えたとはいえないため、因果関係がない。」と認定した。その結果、本件博士論文に関して小保方氏が行った行為は、学位取り消しを定めた学位規則第23条の規定に該当しないと判断した。

持って回った言い方とは、このような言い方を言うのだろう。学位規則第23条の要件を素直に読めば、小保方さんの博士論文(とされるもの)は、(2)で述べているように、6箇所もある「不正の方法」を駆使して作成され、それによって学位の授与を受けた事実が判明しているのではないか。それを、上記問題箇所は学位授与へ一定の影響を与えているものの、重要な影響を与えたとはいえないため、因果関係がない。」と認定し、学位取り消しに当たらないと言うのである。

では、調査委員会が言う「不正の方法」と「学位の授与」との間の因果関係とは、どのようなことを指しているのだろうか。「不正な方法」で論文が書かれても、それが「不正な方法」によって「学位が授与された」と認定されなければ、「不正の方法」と「学位の授与」との間には因果関係がない、と言っているのである。どうも、(2)で言っている「不正の方法」と(3)で言っている「不正の方法」とは、指している内容が異なるようだ。

(2)で言っている「不正の方法」というのは、「著作権侵害行為及び創作者誤認惹起行為」を指している。創作者誤認惹起行為という恐ろしげな言葉は法律用語らしく、委員長は、何だかんだと屁理屈をこねて剽窃や盗用という言葉を使わないようなことを言っていたが、なんのことはない剽窃や盗用のことである。人を誑かそうとしているだけである。

(3)で言っている「不正の方法」は論文作成上の「不正の方法」ではなく、審査委員への賄賂などのことを指しているようだ。金に目がくらんだか弱みを捕まれていて脅されたことで審査を甘くしたり不正を見逃したりして合格させたことが学位授与につながった場合を指しているのだろう。

そして、「不正の方法」を(3)に限定して「重要な影響」と言っているに過ぎない。要するに(1)~(3)は何ら論理的に展開されているのではなく、(1)で言う「学位取り消しの要件」を反故にするために(3)を用意しているというわけだ。論文作成上の不正には目をつぶる、ということだ。これでは、早稲田では、(3)で言う「不正の方法」でなければ、剽窃も盗用もご自由に、ということになってしまう。

製本されて国会図書館に納められた学位論文は“下書きであったことが明らかにされた”ということだ。これにもビックリだ。調査している最中に完成版の提出を求めて、それを見たら不正は認められなかった、と説明していた。調査委員会は博士論文の審査をやり直したつもりなんだろうか。ふざけるのも大概にしろ、と言いたい。学位が授与された後で書き直すなんてことがあっていいものか。しかも、剽窃、盗用が発覚してから、本人が学位論文取り下げを申し出たと言われている。下書きを製本して提出し、知らんぷりしていたことは、どう説明するつもりなのか。偽札を使っていて、バレたら本札を後出しすれば許されるのか。

国会図書館は、下書きを正規版として登録していた(させられていた)のだから、被害者の立場になるのではないか。偽札をつかまされていたことと同じだ。騙されていたと言うことだ。こういうのは文書偽造の犯罪ではないのか。

総長は、会見で、これから報告書を精読して、当該研究科の会議などで議論するようなことを言っていた。記者からの質問には、調査報告書の結論に従うとは言わなかったが、最終的には総長が判断すると述べただけで煮え切らない態度であった。聞けば法学者だそうだ。どんな結論を出すか注目したい。

ひょっとすると、この報告書も下書きでした、ということになるとジョークも行き過ぎだが、早稲田大学の構成員が、今回の調査結果をどう見て、どのような行動をとるのか、そして、全国の大学や研究者、文科省が、早稲田大学の対応をどう評価するのか注目されるところである。早稲田大学内から、そして、各大学や研究者から何も発せられないとしたら、日本の大学は不正を不正と判断できない/しようとしない輩のデタラメが大手を振って名ばかり学位を乱発する低劣愚鈍で口だけ達者な集団とみなされるだろう。そして、形だけ不正防止を唱えるだけで不正を見逃す文科省は、教育研究、学術機関を適切に管理監督する能力のない無用の省庁と見做されるだろう。

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