2014年7月21日月曜日

小保方博士論文の調査報告書は上出来の推理小説も顔負け

小保方嬢やSTAP問題にはもうウンザリして触れたくないところだが、ついつい筆をとってしまう(キーボードを叩いてしまう)。

早稲田大学が調査報告書を大学の公式ウェブサイトの「インフォメーション」欄に掲載した。17日の総長記者会見では1週間以内には公表するといっていたが、それからからわずか2日という手早さに感心した。

しかし、目を通してみて呆れた。調査委員の名前は相変わらず記されていないし、墨塗部分がけっこうあった。調査のために多くの個人や組織に事情聴取したようだが、それらに関しては実名表記ではなく、アルファベットを用いてA氏やW氏と記されていた。まあ、実名を出すまでもないということと、実名を出すことによる弊害を危惧したのだろうが、この調査で実名を出されて不利益を被るようなことはないと思われるので、かえって調査の信憑性を貶めることになっているのではないだろうか。

調査内容と結果の記述には、相当詳しく調査をして正直に書かれていると感心した。提出されて学位が授与された後に国会図書館に保管されている博士論文に認められる不正と杜撰さ、そして、学位審査の杜撰さなど、問題点が余すところなくと言ってよい程に詳述されているという印象を受けた。よくも、まあ、ここまでチェックしたかと驚きでもある。

しかし、である。それほど詳細な調査結果が綴られているにもかかわらず、最後に学位取り消しに該当しないという結論には呆れた。何とかしてその結論を導こうとあれやこれやのこじつけが出てくるところは、捏造のプロセスを見ているような気がした。その一つひとつをここで論(あげつら)うほどのエネルギーを私は持ち合わせていないが、出された結論は、時間をかけて行った調査と調査結果の詳述を台無しにしたと言ってよい。調査を担当した委員も事情聴取を受けた面々も、なんて無駄な時間を費やしたのだろう、ということになる。

調査報告書の冒頭から順に読んでいけば、たどり着く結論は学位取り消しとなるにちがいない、ということを予想させる。記者会見での委員長の説明の仕方もそうだった。そこまで不正や杜撰さを詳しく説明しておきながら、最後には当然そうなるだろうと予想させる結論と全く逆の結論が出た。推理小説の大家でも、これほど読む側の推理を覆す結末を用意できないだろう。

下書き論文を微に入り細にわたって検討し、不正や杜撰さを事細かに指摘しておきながら、実は、それが下書きであることが筆者の小保方晴子の供述から判明したので、下書き論文に対する非難は当たらないようなことを言っている。しかも、完成版と小保方が主張する論文にも不正や杜撰さが残されており、それが本当に小保方が言う完成版として提出しようと思っていた論文かは確定できないなどと言う。わけがわからん、とはこういうことを言うのだろう。

ミステリードラマの10回分くらいの脚本が書けそうである。題名は、そう、『なぜ、彼女は下書き論文で博士号を取得できたか』ではどうだろうか。これでは、あまりにもそのまんまでつまらない。うーん、どうするか。後で考えたいが、誰か考えてほしい。

調査委員会は、調査の結果だけを報告し、取り消しに該当する否かを判断するべきではなかったのだ。調査を依頼した早稲田の総長がそこまで求めたのかどうかわからないが、学位を授与するか否かも学位を取り消すか否かも、ふつうは、それらを審議し、決定するのは教授会/研究科委員会や大学評議委員会などの最高議決機関が行うことであろう。だとすれば、解釈や判断を加えることなく、明らかにされた事実を客観的に淡々と記述することに徹すればよかったのだ。そうすれば、最高議決機関の有意義な判断材料になったであろう。言ってみれば、調査委員会は越権行為を行ったことが、いたずらに世間を混乱させて、早稲田大学の品格を貶めることになったと言うことである。

早稲田大学の構成員にも、匿名や墨塗の多いこの報告書が渡され、それをもとに議論するのであろうか。早稲田大学が推理小説の恰好の材料を提供することなく、日本有数の大学としての矜持を保とうとするならば、“この調査報告は十分に参考とするところが多かった”と言って、最低でも学位の取り消しを行い(博士論文に剽窃が見つかり、学位が取り消されただけではなく除籍処分にもなった例もある)、関係者に対する厳格な処分を行うべきであろう。そして、この問題に関連する全ての疑惑に対しても大鉈を振るって解決することが、安倍首相肝いりの教育再生実行会議の座長を務める鎌田 薫総長を頂く早稲田大学に期待されることであろう。

ついでに言えば、STAP問題で名前と顔が知られるようになった川合眞紀東京大学教授(理化学研究所理事)も、この教育再生実行会議の構成員である。鎌田総長と川合理研理事が、教育再生実行会議という、いままさに両人が直面している問題に深く関わる教育再生と銘打った会議の構成員になっていることは、たまたま、と言うにはできすぎで、上出来のブラック・ジョークと言えなくもない。

以下に、教育再生実行会議の趣旨と構成を摘記しておく。こうした会議の座長が鎌田総長であり、構成員の一人が川合理事であることを外国の研究者らが知ったら、どんな感想を持つか興味があるところである。

1.趣旨
21世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を実行に移していくため、内閣の最重要課題の一つとして教育改革を推進する必要がある。このため、「教育再生実行会議」(以下「会議」という。)を開催する。
2.構成
(1)会議は、内閣総理大臣、内閣官房長官及び文部科学大臣兼教育再生担当大臣並びに有識者により構成し、内閣総理大臣が開催する。
(2)内閣総理大臣は、有識者の中から、会議の座長を依頼する。
(3)会議は、必要に応じ、関係者の出席を求めることができる。
3.その他
会議の庶務は、文部科学省その他の関係行政機関の協力を得て、内閣官房において処理する。

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