2014年7月22日火曜日

教員採用試験と非正規教員

小・中学校教員の採用試験が、いま、全国で行われている。文科省の資料によると、平成25年度における公立の小学校と中学校の採用倍率は、それぞれ4.49倍と8.08倍である。かなり高い倍率と言える。

上の資料には、採用者数に占める新規学卒者の比率の推移と採用時の平均年齢の推移も掲載されている(下の図)。

 
平成10~22年度までの数値であるが、新規学卒者の割合は半分にも満たない。平均して何回(何年)くらい受験しているか不明だが、この図から、半分以上は複数回受験した末に合格していることがわかる。
 
 
平成22年度における採用時の平均年齢は、小学校で27.8歳、中学校で28.6歳である。22歳で大学を卒業したとして、5年くらい経っていることになる。大学受験に際して浪人した場合や大学在学中に留年した場合、大学院を修了した場合、転職の場合なども考えられるから、5~6回受験しないと合格しない、とは言い切れないが、企業への就職に比べて、就職時の平均年齢はだいぶ高いように思われる。
 
仮に、22歳で大学を卒業して教員採用試験を5~6回受験したとする。では、その5~6年間はどうしていたかということになる。そのことに関する資料を持ち合わせていないので正確なことは言えないが、大学受験のように只管(ひたすら)受験勉強に励んでいた人は少ないようだ。聞くところによれば、非正規教員として教壇に立っている人が多いという。
 
上の資料には、非正規教員数の推移を示した図も掲載されている(下の図)。
 
 
平成17年以降、非正規教員の実数も割合も増えている。平成24年度では、11万3千人、16.1%になっている。少なくない数・割合と言えるのではないだろうか。
 
非正規教員うち、授業だけを担当する非常勤講師が約5万1千人(5月1日に勤務している実数で、教員全体の7.2%に当たる)、正規教員と同じ勤務時間でほぼ同様に授業と校務を行う常勤講師と呼ばれる臨時的任用教員が約6万3千人(8.9%)である。
 
常勤講師は、本来、正規教員が産休や育休で学校を離れている期間、臨時的に任用される代替教員であるが、下の図に見るように、実際は、そうした理由での代替教員としてではなく、「その他」の理由で任用されている常勤講師が年々増加しており、平成24年度では、常勤講師5万8千681人の中で4万1千742人(71.1%)を占めている。そして、その多くが教員採用試験受験浪人(適切な用語かどうかはわからないが)なのだろう。
 
 
正規教員の産休や育休、病気やケガのために代替教員が必要とされることは理解できる。しかし、そうした理由ではなくて常勤講師を大量に任用していることは腑に落ちない。しかも、教員採用試験に合格しなかった者に正規教員とほぼ同様の仕事をさせているのである。これでは、教員採用試験などは必要がないということではないだろうか。
 
採用試験では、常勤講師の経験が無いと不利であるとか、常勤講師を何年かしないと採用されないということもあるようだ。常勤講師を3年やると一次試験が免除されるということも聞いたことがある。これでは、まるで常勤講師の経験が採用試験の受験資格として制度化されているようなものだ。
 
教員採用試験受験浪人にとっては、経験を積むことができることと正規教員に近い待遇を得られることから、ほかのアルバイトをしながら教員採用試験のための受験勉強をするよりはいいのかもしれない。しかし、不合格にした受験者を正規教員と同等の勤務につかせることに任用する側は矛盾を感じていないのだろうか。
 
常勤講師は正規教員と同様の勤務をするわけであるから、受験勉強に十分に時間を割けないことになり、翌年の受験に自信が持てなかったり不安を抱えるなどして受験をためらったり、受験しても試験に失敗したりすることもあり、一度常勤講師をすると何年も繰り返すことになると聞く。
 
試験に合格していない者を常勤講師として教壇に立たせるべきではない言っているのではない。そうした形態で非正規教員を任用することの矛盾を問題にしているのであり、任用する側に問題があると言いたいのである。教育再生実行会議とやらで小難しい議論をしているようだが、そんなことに時間と費用をかける前に、中長期的な教員採用計画の杜撰さを半年契約の常勤講師の任用で糊塗しつづけている現状に、そして、何のための教員採用試験であるかということに、まずは目を向けるべきであろう。

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