2015年7月8日水曜日

高齢化と人口減少が進むのは豊かな社会の証拠

総務省が最近公表した住民基本台帳による人口統計によると、2015年1月1日現在の老年人口割合は25.60%だそうだ(下の表:総務省発表の資料の一部を加工)。人口のちょうど4分の1が65歳以上ということになる。平成25年から1.5%ポイント増加している。実数で言うと、185万6,582人の増加である。すごい勢いで増加している。急速な高齢化が進んでいることがわかる。

 
日本住民と外国人住民とを分けて見ると、日本住民の老年人口割合は25.90%で、外国住民のそれは6.98%と、両者に大きな差がある。外国人住民が日本の老年人口割合を、ほんの僅かではあるが、引き下げていることがわかる。老年人口とは逆に、年少人口と生産年齢人口では、外国人住民がそれらの割合を、これもほんの僅かではあるが、引き上げている。
 
日本における外国人住民の割合は2%未満に過ぎない(下の表:総務省発表の資料の一部)。そのことが、日本の年齢別人口構成に外国人住民が与える影響をごく僅かなものにしている。
 
日本人住民の人口は減少を続けており、この1年で27万1,058人も減少している。これに対して外国人住民は増加しているが、わずかに6万人強にすぎない。 
 
比較する資料がまちまちだが、日本に外国人住民の割合は、先進産業国の中では韓国と並んで極端に小さい(下の表:法務省入国管理局の資料)。
 
 


 どの国においても、外国人住民の年齢は総じて若く、出生率も高い。日本の高齢化が先進産業国の中でも急激で、出生率が低くて人口減少を続けているのは、他の先進産業国に比べて外国人住民の割合が極端に小さいからだろう。だからといって、移民の奨励などで外国人住民を増やせばいい、と言おうとしているわけではない。ただ、事実がそうなっているということだ。
 
30年くらい前のことだが、徳島の山村で、ある家の縁側に腰掛けて眼前の迫る杉山の美しさに見とれていたとき、「この頃では子どもの声も聞かないし、物干し竿に掛かっている洗濯物も、以前にはたくさん見かけた可愛らしい子どもの服なんか全然見なくなって、爺(じい)さん、婆(ばあ)さんの古くさい洗濯物ばかりだ。それに、子どもたちには、いい山だと言っても、山ばかり見て暮らせは言えないし、村を出て行ってしまうのも仕方ないことだよ」と話しかけられた。
 
若年人口の流出による過疎化が山村を急速に高齢化させていった例だが、それから30年を経た今日では、都市近郊の住宅団地でも、子どもの歓声や歌声が以前よりもずっと少なくなった。
 
その代わりと言うべきか、朝早くから元気に歩き回るお年寄りの姿が目立つようになった。そして、老男老女(とくに老女ら)のお喋(しゃべ)りの声が賑やかになった。が、それも、次第にあまり聞かれないようになってきた。老いが重なり、外でお喋りする体力も気力も低下したり、亡くなる人も増えてきたからだろう。
 
高齢化が進み、出生率が下がり、ひいては人口減少が進むのは、社会が豊かだからだ。社会が豊かになれば高齢化が進む。そして、中国のような一人っ子政策をしなくても、出生率は低下する。低い出生率が続けば高齢化が進む。低出生率と高齢化が続けば、死亡数が出生数を上回って人口は減少する(人口の自然減が進む)。
 
上で取り上げた総務省の資料によれば、2014年1月1日から12月31日までの1年間の出生者数は、日本人住民では100万3,554人と調査開始(昭和54年度)以降最少で、外国人住民では、1万4,449人と前年より増加している。死亡者数は、日本人住民では、127万311人と調査開始(昭和54年度)以降最多で、外国人住民では6,654人と前年より減少している。
 
その結果、日本人住民の自然増減数は、26万6,757人の減少になり、外国人住民は、7,795人の増加になっている。
 
先進産業国=豊かな社会は、どこでも日本と同じように高齢化が進んでおり、出生率も低い。その社会が豊かになれば、そうした現象が必然的に起こるということだ。そして、それは、避けられない現象であり、ふつうの成り行きなのである。
 
日本は、上で見たように、外国人住民の割合が極めて小さい。そして、外国人住民の転入-転出の差し引きは5万人程度であり、外国人住民の自然増を加えても、外国人住民の増加は年に5~6万人ほどである。要するに、日本は、日本人住民(母国人)がほとんどを占めていて、住民構成から言えば、いわば閉じられた社会である。その結果、日本は、「豊かな社会になれば高齢化と低出生率が進み、人口が減少する」という現象が典型的に現れている国なのである。
 
こう考えると、高齢化を止めることも、出生率を上げることも、人口減少を食い止めることも、とても難しいことがわかる。極論すれば、豊かさを追い求めようとする限り、そうしたことは不可能ということになる。
 
人口減少を食い止めようと出生率を上げるためのあれやこれやの政策が講じられてきた。しかし、どれもこれも功を奏していない。言ってみれば、無駄を繰り返し続けている。平成27年度予算でも、地方創成関連予算の中で、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」予算として1,096億円が、「社会保障の充実」予算の中で、「子ども・子育て支援」予算が5,189億円が計上されている。
 
しかし、「高齢化・低出生率・人口減少」が豊かな社会にしっかりと組み込まれた遺伝子であるとすれば、突然変異を引き起こすくらいの強烈な刺激を与えるような少子化対策でなければ実効性は期待できないだろう。日本の将来を本当に考えるなら、安保法制などを議論したり、アジア開発銀行(ADB)と連携してアジアのインフラ整備に今後5年間で約1,100億ドル(約13兆2,000億円)を投じると大見得を切っている暇はないのではないだろうか。

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