2014年8月4日月曜日

STAP細胞問題に対する理研の声明は慇懃無礼このうえない

理研は、 日本学術会議幹事会が平成26年7月25日に出した声明を受けて、STAP細胞事案に関する理化学研究所の対応についてと題する広報記事を4日に公開した。

色々ともっともらしいことを言っているが、要するに、まさか日本学術会議幹事会がそんな声明を出すとは思っていなかっただろうから、あわてて、これはまずい、ということで、10日ばかりかけて、釈明文のようでもあるし、反論文のようでもあるような、へんちくりんというか慇懃無礼な自己防衛論を唱えたというところであろう。

もっとも、日本学術会議も、日本学術会議の声明としてではなく、幹事会の声明などという中途半端な形での声明だから、どこまで本気か訝る向きもあろう。理研も、その程度の声明かと高を括っているのかもしれない。「今後とも、日本学術会議のご協力とご支援をいただきたく存じます」なんて書いているが、日本学術会議幹事会の声明なんて屁でもないと思っているのであろう。

横道にそれるが、「STAP細胞事案」という表現にちょっと違和感を感じたので『広辞苑』にあたってみた。すると、次のような説明があって、参照語に「案件」があげられている。「事案」と「案件」には大きな違いがあるようだ。

じ-あん【事案】
(処理の対象とするしないにかかわりなく)問題になっている事柄そのもの。
あん‐けん【案件】
処理されるべき事柄。議題とされる事案。「重要―を処理する」


なるほど、「事案」というのは、処理の対象にしなくてもよい事柄についても使われる言葉なんだ。日本学術会議幹事会の声明も「STAP細胞事案に関する理化学研究所への要望と日本学術会議の見解について」 と題されている。揚げ足を取るわけではないが、日本学術会議にとっても理研にとっても、STAP細胞問題は、案件ではなくて事案にすぎないというわけだ。もっとも、日本学術会議や理研がそこまで考えて「事案」を用いたかどうかは定かではないが、「捏造」とはなんぞやとか「悪意」とはなんぞやということも議論されたことがあるから、よ~く考えて「事案」を用いたんだろうと考えるのは穿(うが)ち過ぎか。

以下は、理研の声明である。理研のサイトにアクセスするのが面倒くさいという人のために転載しておく。桃色部分は転載に際して着色した。これまでの理研の対応が、そこで言っていることと大きくかけ離れているにもかかわらず、よくも、ぬけぬけと、という印象を持たれる方が多いのではないかと思う。理研のこうした対応の背景には何があるのだろう。

2014年8月4日
独立行政法人理化学研究所

STAP細胞事案に関する理化学研究所の対応について

独立行政法人理化学研究所(以下「理研」)の研究者が発表した論文が科学の信頼性を損なう事態を引き起こしたことに対し、我が国の科学界を代表する日本学術会議にもご心配をおかけしていることをお詫び申し上げます。今回、日本学術会議幹事会よりSTAP細胞事案に関し、平成26年7月25日付けで声明が出されたところですが、理研としての本件への対応について、改めて説明させていただきたいと存じます。

理研は、STAP細胞事案について、研究不正の有無、科学的検証、研究論文の取扱い、そして再発防止に向けた取組み、の四つを基本方針として対応しております。

理研は、今回の事案への対応を、わが国の研究機関の範となる組織体制、運用の構築、さらに社会の信頼を再度得て社会へ貢献するための改革と位置づけて取り組んでおります。理研のあるべき姿を念頭におき、国民、科学界をはじめ各界の方々の意見や国際的な水準も考慮して改革を進めてまいります。今後とも、日本学術会議のご協力とご支援をいただきたく存じます。

研究論文の取扱と研究不正の有無

論文の取り扱いについては、理事長からの勧告等に従い、著者らの申し出により平成26年7月2日に既に2篇とも取り下げられました。

しかし、「研究論文の疑義に関する調査報告書」(平成26年3月31日)以降に新たに指摘があった科学的な疑義を踏まえ、「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」(平成24年9月13日規程第61号)に基づく予備調査を開始しています。予備調査では、後述の、保全されている STAP細胞株などを科学的に解析した結果も考慮いたします。仮に、調査により新たな不正が認定される場合には、共著者の処分の重さに影響する可能性があることから、同報告書による認定に基づき進められてきた懲戒委員会における審査を一時停止しています。この調査の結果が明らかになり次第、検証実験の帰趨とは関係なく、処分の審査を再開する所存です。

科学的検証

一般的に、科学界では論文撤回は、その論文で主張された内容が「なかった」ことを意味します。他方、理研が行ったSTAP現象のプレス発表により、社会が将来の再生医療の可能性について大きな期待を抱くこととなりました。論文が取り下げられた時点においても、社会の中に理研が真相を解明し、STAP現象の有無を明らかにすべきであるという意見が多くあると認識しています。

このため、理研は、発生・再生科学総合研究センターに保全されている STAP細胞株などを科学的に解析するとともに、STAP現象の有無を明らかにするための検証実験を行う社会的責務があると判断しました。保全されているSTAP細胞株の科学的解析については、発生・再生科学総合研究センターはもとより、理研が有する解析能力を最大限に活用し取り組んでおります。検証実験については、まず、平成26年4月1日より相澤実験総括責任者と丹羽研究実施責任者の下で、論文で報告された方法のみならず、他の分化細胞からの誘導の可否についても検証実験を進めています。

また、小保方研究ユニットリーダーにはNature論文で報告したプロトコルに沿って、高い透明性を確保するための措置を講じた上で、本年11月末までと期間を区切って検証実験をさせています。「研究不正再発防止のための提言書」(以下、「提言書」という)においても、自身により、2篇の論文ないし平成26年3月5日に理研により発表されたSTAP現象誘導プロトコルによる範囲内での、STAP現象の再現実験を行うことと指摘されているところです。

再発防止に向けた取組み

理研は、提言書等を踏まえて、研究不正再発防止改革推進本部(本部長:理事長)において改革のためのアクションプランの策定作業を進めています。理研の考えは、今後、アクションプランにおいて早急に提示してまいります。

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